自民党総裁に求む クリントンの思い切りと角栄の視点 経済ヨコからナナメから
「要は経済なんだよ、ばか者」。1992年の米大統領選で勝利したビル・クリントン氏陣営の合言葉だ。指導者として支持を得たいのなら、政治信条や国への思いだけでなく、経済、国民の生活をよりよくするのだというアピールを忘れてはならない。 あす、自民党総裁選挙が告示され、候補者は27日の投開票に向けて論戦を本格化させる。事実上の首相選だ。全国民にとって切実な問題である経済は最も重要な論点となる。 もう辞めてしまうけれども岸田文雄首相は、経済政策の看板に「新しい資本主義」を掲げた。そして、就任直後の令和3年10月の衆院選、4年7月の参院選ともに勝利。次の参院選まで思う存分、政策実行に打ち込める「黄金の3年間」を手にしたといわれた。 ただし、それを生かすには条件があった。支持率を常に高く保つこと。第6代自民党総裁、庶民宰相と呼ばれた田中角栄元首相はこう言っている。「民主政治は、一つ一つの政策がどんなに優れていても、国民各位の理解と支持がなければ、その政策効果をあげることはできません」(昭和47年10月、所信表明演説) 取材先の政府関係者からはこんなことを聞いた。「内閣支持率は株価に連動する。だから株価は気にしている。上げないとだめなんですよ」。株価、支持率が高ければ政策を実行しやすくなって効果もあがり、結果、支持率が高くなり…と好循環が期待できる。 東京株式市場の日経平均株価は、岸田内閣発足(令和3年10月1日)から岸田氏の総裁選不出馬表明(6年8月14日)までの間に2万8771円から3万6442円へと約1・27倍になった。この間、バブル期の最高値3万8915円を超え、4万2224円まで上昇する場面もあった。 「経営者が企業統治改革に取り組み、海外投資家から評価された」(市場関係者)からだとされるが、業績も好調で、東京証券取引所に上場する主要企業の6年3月期決算は3期連続で過去最高益(SMBC日興証券の集計)。春闘の平均賃上げ率は33年ぶりの高水準となる5%超と、経済復調の兆しが見えてきた。 その裏で自民党派閥の裏金問題は深刻さを増し、内閣支持率は低迷。発足当初の63%から一時70%に迫りながらも、今年7月には25・1%まで落ち込んだ(産経新聞とFNNの合同世論調査)。古い言い回しだが、これこそ「経済一流、政治は三流」ではないか。