自民党総裁に求む クリントンの思い切りと角栄の視点 経済ヨコからナナメから
岸田内閣は新しい資本主義のテーマである「経済成長と分配の好循環」を目指したが、旧来のばらまき政策が目立つ。1人当たり4万円の定額減税に、電気・ガス代、ガソリン価格を抑えるための補助金、と将来の財政逼迫(ひっぱく)と国民負担増を容易に想像させるものだ。評判は芳しくなかった。
一方で防衛力強化のための増税をいつ行うかの決定は先送りし、「異次元の少子化対策」の財源をまかなうために設ける支援金制度については国民負担増が「実質ゼロ」と不可解な説明に終始。国民に負担を求め理解と協力を得る、という胆力を要する仕事から逃げているようだ。
企業業績や賃金がよくなったとはいえ、物価高は続いている。消費と景気の回復に水を差す将来不安もくすぶる。こうした難題を解決するために黄金の3年間は使えたはずだ。しかし、岸田内閣は政治不信を払拭できず、目先の人気取り策に走ってしまった。
次の総裁、首相は「要は経済なんだよ」と腰を据えて指揮を執るために国民から真の「理解と支持」を得なければならない。なのに候補者からは早くも人気取りと思(おぼ)しき政策が聞こえてくるのが気がかりだ。