「肌が弱い人のための化粧品開発を」 弟が敏感肌で、植物パウダーを研究
廃棄されるカリン果実を活用
島田さんは、柴田教授の「化粧品材料化学研究室」に入りました。この研究室では、敏感肌・高齢肌でも安心して使える化粧品のための成分・製剤開発に取り組んでいます。 「弟が敏感肌で、子どものころから肌に触れるものに制限があったり、保湿を入念にしたりするのを見てきました。そうした経験から、肌が弱い方や高齢の方にも幅広く使える化粧品を開発したいという思いがあり、柴田研究室に魅力を感じました」 柴田研究室では、化粧品で使用する界面活性剤や紫外線防御剤、プラスチック・石油原料などを植物から採取した材料に置き換える研究を行っています。研究グループは、乳化のための植物パウダーの開発や、肌と環境にやさしい紫外線防御剤、植物色素を使った高機能色材、植物系ゲル化剤の研究などがあり、島田さんが取り組んだのは植物パウダーの開発です。 「化粧品には水と油が含まれていて、乳化剤として界面活性剤が欠かせません。しかし、界面活性剤によって肌荒れを起こしてしまうことがあります。そこで界面活性剤を使用せずに、植物由来の粉体を使って乳化させる研究に取り組んでいます」 島田さんが使用している植物は、カリン果実です。カリンは果汁がのど飴などに使われますが、果実の繊維部分は生では食べられず、廃棄されます。柴田研究室では、数年前から廃材を有効活用するため、カリンの繊維を化粧品に活用する研究を行ってきました。 「溶媒を用いて処理したカリン粉体に、乳化作用があることが先輩の研究でわかりました。私はその研究を引き継ぎ、カリン粉体のサイズと乳化性能の関係を調べています」 研究の結果、サイズが小さいほど乳化性能が優れていることが明らかになりました。一方で、粉体サイズが大きいケースでも新たな発見があったそうです。 「粉体サイズが大きくてもある程度の乳化性能はあり、乳化滴を巨大化させる力があることがわかりました。それにより、肌に触れると感触が独特で面白いんです。単に優れているものを見つけるのではなく、それぞれの特性を発見していくところに研究する楽しさを感じています」