誕生100周年「ペンドルトン」のウールシャツが愛され続ける理由
1924年の誕生より、100周年を迎えたペンドルトンのウールシャツ。その歴史的傑作にして超ロングセラーはいかにして生み出されたのか。来日した経営陣に、時代の変化を捉えたモノづくりについて語ってもらった。 【写真】「ペンドルトン」希少なヴィンテージのウールシャツ
現代でこそ際立つ100年目の存在感
情報化社会の発展により、モノが生まれては消えるサイクルが日増しに早まっているように感じる現在。その象徴がファッションだが、そんな流行があっという間に消費される分野にあって、100年間つくり続けられているモノがある。そのごく稀なモノのひとつが、米国オレゴン州にて1863年に創業したペンドルトンが、1924年から現代まで製造し続けているウールシャツである。 未脱脂のままの原毛により、保温性や撥水性、抗菌・防臭性といったウールが本来備える機能を最大限に引き出せるヴァージンウールのみを厳選。鮮やかな色柄に染め上げた、自社製ウール生地で仕立てるペンドルトンのウールシャツ。誕生以来、デザインもほぼ変わることなく、1世紀にもわたりつくり続けられてきたのはなぜなのか。ウールシャツ誕生100周年を機に来日した、ジョン・ビショップCEOとバイスプレジデントのボブ・クリストノックに訊いた。
「品質はカスタマーとの信頼を築くためにあるのです」
―― 2024年でペンドルトンのウールシャツは誕生100周年を迎えました。この偉業をどう捉えていますか? ジョン この100年間製造し続けてきたことによって、弊社は「ウールシャツ」という衣料を世界に定義付けられたのではないかと自負しています。それはスタイルだけでなく、着心地やクラフツマンシップにおいてもいえることです。だからこそ、多くの方に“マスターピース”と称賛していただき、今日までつくり続けてこられたのでしょう。 ボブ 弊社のウールシャツは、これまで購入していただいた方々の人生の一部になってきました。いまでは祖父や曽祖父の時代から受け継いだシャツを着ている方もおり、ファミリーに代々受け継がれるものにもなっています。また、1960年代の西海岸で流行したサーフカルチャーのユニフォームとなり、現在も南カリフォルニアのローライダーカルチャーに欠かせない服となっているように、さまざまなカルチャーを体現するアイテムにもなってきました。このようにウールシャツが人々の人生や歴史、カルチャーの一部となれたことは、とても喜ばしく誇りに思っています。 ―― ペンドルトンがウールシャツを100年つくり続けられた秘訣はなんでしょうか? ジョン カスタマーと真摯に向き合い、そのニーズに応えてきたからでしょう。 ボブ その通り。私たちは100年間、高品質なヴァージンウールにこだわってきたことをはじめ、これまで品質に妥協することはありませんでした。それはカスタマーとの信頼を築くために他なりません。私たちが掲げるスローガン“WARRANT TO BE A PENDLETON(ペンドルトンであることを保証します)”は、そんな私たちのカスタマーに対する責任の表明でもあるのです。また、ペンドルトンは創業から今日までずっと小規模なファミリー企業ですが、それもウールシャツをつくり続けられた要因のひとつでしょう。大きな営利企業のように、売れなければやめるとはならず、ファミリーのなかで受け継がれてきたから続いたのです。