「噛み癖が治らない」処分対象”コロナ犬”を引き出すと…保護活動家が流した涙の理由
「噛む犬」は即殺処分の対象に
動物支援団体「ワタシニデキルコト」(以下、ワタデキ)の代表、坂上知枝さんに、毎月、保護活動の実態や、保護犬・保護猫とのエピソードを伺っていく、本連載。今回は、咬傷(咬みつき)犬として、福島県の動物愛護センターに持ち込まれたトイプードルとチンのミックス犬・バビオの物語を紹介する。 【写真】虐待され咬傷犬として保健所に連れてこられたバビオは目がどことなくうつろ… 飼い犬が人を咬んだ際には、保健所に「事故発生届出書」を提出することが義務づけられている。犬の咬傷行為に悩み、地元の保健所や動物愛護センターに持ち込まれるケースも少なくないという。 「センターにもよりますが、たいていの場合、咬傷犬として飼い主から持ち込まれた犬は殺処分の対象となり、基本的に一般の方への譲渡はされません。バビオの場合も一般譲渡できないと現地の保護活動家の方から相談があり、引き取ることにしました」 坂上さんのところにやってきた時点で、バビオは3歳。一口に咬傷犬といっても程度に差はあるが、坂上さんのところにそこまでの情報は来ていなかった。 「センターでは、『リードの先でちょんと叩いたら咬みついてきた』『おもちゃを取ろうしたら威嚇してきた』とのことでした。信頼関係ができていない状態なら、それは仕方ないよねとあまり参考にせず、ワタデキで迎えることにしました」 現地の保護活動家さんに中継地点の茨城まで搬送してもらい、東京の自宅へ連れていくクルマの中で、「バビブベボとうたいながら、バビオという名前を付けました」と坂上さんは振り返る。
なぜ噛んでしまうのか
東京に連れてきてすぐにシャンプーを行ったが、バビオはおとなしく洗わせてくれたそうだ。 「どこを触っても大丈夫で、『いったいどこに問題があるの?』と思いました。それに、とても賢い仔で、2日目には、自分の新しい名前を認識していました」 しかし、坂上さん宅にやってきて、3日もたつとだんだんと様子がわかってきた。 「まだ我が家での生活に慣れていない、引き取ったばかりの犬にはよくあることなのですが、シート以外のところでトイレをしようとしたので、「だめよ」といいながら手を出したら、がぶっとやられました」 坂上さんは、いったいどの程度咬むのか、バビオの思うままに咬ませてみたという。 「咬んでいたのは、だいたい10秒くらいでしょうか。元の飼い主のところで歯を削られていたので、大事にはなりませんでしたが、かなり流血はしましたし、2週間くらい手に跡が残りました。 バビオは大きな声を出されるのが怖いのです。恐怖が咬傷行為につながっていることがわかりました。ちょっとした音にも敏感に反応します。突然、上から手が出てくるのも怖いんだなとも思いました。おそらく元の飼い主に、怒鳴られたり、叩かれたりしていたのでしょうね。 また、自分が執着しているものを取ろうとすると威嚇行為があり、無理に取ろうとすると咬もうとしました。 ただ、穏やかに言い聞かせたりおやつと交換するなど、 信頼関係を結び、バビオの気持ちを汲んだ対応をすればすぐ落ち着くこともわかりました」 坂上さんたちの適切な対応が功を奏して、咬傷行為はどんどん減ってきた。