バイナンス、ナイジェリア制裁の一部始終:落胆するビットコイン・ユーザーと為替レートを巡る不都合な真実【取材】
一時は世界で最も人気を集めた暗号資産取引サービスのバイナンスが、アフリカ最大の暗号資産市場のナイジェリアで、サービスの停止を余儀なくされた。金融システムが十分に整備されていないサブサハラには、ビットコイン(BTC)やステーブルコインのヘビーユーザーが多く存在するなか、混乱と懸念の声が各都市から聞こえてくる。 ナイジェリア政府から巨額の制裁金を課せられたバイナンス(ナイジェリア)は5日(現地時間)、ナイジェリアの法定通貨「ナイラ」をベースとする暗号資産取引サービスの停止を発表した。利用者は8日以降、バイナンスのアカウントからナイラを引き出すことができなくなる。口座に残る現金は同日以降、自動的にステーブルコイン「テザー(USDT)」に変換される。 「ナイラ/ビットコイン」や「USDT/ナイラ」などのペア取引サービスは、7日までに停止し、バイナンスにとってはナイジェリアからの事実上の事業撤退を意味する。 バイナンスがナイジェリアやケニアで人気を博してきた理由の1つは、取引手数料の安さだ。売り手と買い手をつなぐ多くのブローカーと個人ユーザーは、バイナンスでそれぞれアカウントを開き、個人はブローカーが示すレートを見ながら、実際に取引を行うブローカーを選ぶ。結果的に、双方のユーザーは、バイナンスを通じて「適正」と判断できるレートを知ることができる。 「バイナンスを利用してきた多くのブローカーや個人ユーザーは、すでに他の取引所やP-to-Pプラットフォームへの移動を始めた。しかし、バイナンスはこれまで最も競争力のある取引手数料を提示してきたため、代替となるプラットフォームを探すことは容易ではない」と話すのは、ケニア・ナイロビ在住の金融ジャーナリストで、資産価値の保存を目的に暗号資産を保有するフォースティン・ウギラ(Faustine Ngila)氏。 「ナイジェリアには詐欺まがいのP-to-P取引サービスが存在するなか、多くの個人にとっては信頼できるプラットフォームがバイナンスだった」とウギラ氏は言う。