バイナンス、ナイジェリア制裁の一部始終:落胆するビットコイン・ユーザーと為替レートを巡る不都合な真実【取材】
ナイジェリア政府が強硬する「バイナンス制裁」
政府によるバイナンスに対する制裁を巡っては、少なくとも昨年の7月まで遡る。ナイジェリアの金融当局は同月に、バイナンスのナイジェリアでの事業活動は不法であると明言した。 その後、年末にかけ、ナイラは下落を続け、ビットコインは史上最高値に向かう中、政府は同国の通信会社に対して、バイナンス、コインベース、クラーケンなどの暗号資産取引プラットフォームとの事業連携を止めるよう要請したと、複数のニュースメディアが報じた。 米国では11月、バイナンス(ホールディングス)と最高経営責任者のチャンポン・ジャオ(CZ)が、マネーロンダリング(資金洗浄)防止法違反に加えて、イスラム組織ハマスや他のテロリスト集団との取引を容認。バイナンスは刑事責任を認めて、43億ドル(約6,430億円)の罰金支払いに同意した。 ナイジェリア政府の強硬な動きはこれだけでは終わらない。今年2月には、ナイジェリア中央銀行(CBN)・オラエミ・カルドソ総裁の発言を、ローカルメディアが報じた。カルドソ総裁によると、過去1年で260億ドル(約3兆9,000億円)相当の追跡不可能な資金が、バイナンス(ナイジェリア)を経由して取引されたという。 2月最終日の29日、ナイジェリアに入国したばかりのバイナンスの幹部社員2名が拘束されたと、フィナンシャル・タイムズ(FT)とブルームバーグが報じる。そして翌3月1日、政府はバイナンスに対して100億ドル(約1兆5,000億円)の罰金支払いを要求した。
為替レートを巡る不都合な事実
ナイジェリア政府がこれ程までに強硬な姿勢を堅持する背景には、法定通貨ナイラの為替レートを巡る不都合な事実がある。 ボラ・ティヌブ大統領の報道官を務めるバイヨ・オナヌガ氏は1日、BBCの取材で「バイナンスはナイラの為替レートを設定しているが、これは中央銀行のみが権限を持つべきもの」と述べ、バイナンス上で表示されるレートが、ナイジェリア国内で実際に取引されるレートに影響を与えていることを問題視した。 「バイナンスにしてみると、取引プラットフォームを運営しているだけで、特段問題があるとは考えていないだろう。一方、政府にとっては、ナイラ/USDC(米ドル連動のステーブルコイン)のペア取引で用いられるレートが、市内で実際に取引されるナイラ/米ドルのレートを動かす事態は、都合が悪い」と、ナイジェリアでブロックチェーン業界を代表するロビー団体「BICCoN」の会長を務めるラッキー・ウワクウェ氏はコメントする。 ナイラの慢性的な脆弱性はもはや目新しいニュースではないが、ナイラ安・ドル高は過去1年で急激に進行した。また、ナイラにはオフィシャル・レートとブラックマーケット・レートの2つのレートが存在し、ナイジェリアに暮らす人たちはブラックマーケットレートを日常的に使うが、海外の旅行者が滞在するホテルで両替する時のレートは通常、オフィシャル・レートだ。