プロ野球は「国民的娯楽の王様」というフェイク。実は、日本のベースボールは衰退の危機に突入
卒業後は大学や企業、そしてスーパーエリートがわずか百数十人だけプロ野球に入団できます。このエリート調達システムは、相当完成されたものであり、それゆえ日本のベースボールの水準は世界に引けを取りません。 しかし、この超人たちのリクルート・システムは、高校以後は地域密着とどんどん縁が遠くなっていきます。青森県の甲子園の代表校の選手のうち、青森県内の中学校出身者はわずかしかいません(2023年夏)。 元メジャーリーガーの楽天の田中将大選手は駒大苫小牧高でしたが、もともとは兵庫県の宝塚ボーイズの出身です。ダルビッシュ有選手も大阪のボーイズリーグでは伝説的天才選手でしたが、東北高校へ行き、甲子園でノーヒッターとなりました。
■大谷の活躍で競技者は激増したか しかし、全部で800人ほどしかなれないプロ野球選手のリクルートメントだけで、ベースボールはスポーツ文化として社会に磐石の基盤をもてません。もちろん超人的プレーが、この競技を知らない人たちに衝撃を与え、それを契機に人気が高まるということは考えられます。 それでは、二刀流メジャーリーガーとなった大谷翔平選手の圧巻の活躍があって、新たにベースボールを始めようとする子どもは激増したでしょうか? していません。
あるスポーツ競技を支える人たちとは、やはり小中高という子どもの時代に部活や地域のクラブで自分が競技者としてプレーしてきた人たちであり、それが超人たちを支える裾野なのです。 その点で言えば、小中学校の競技人口において野球はサッカーに逆転され、高校でも部員数は減り、野球離れは顕著となっています。中高の野球部員が減っているのは、そもそも少子化だから当然だと楽観視する野球関係者もいますが、中体連や高野連の調査に見られる部員数の減少は、少子化の数倍のスピードで進んでいます。原因は少子化だけではないのです。
実際、私の子どもは中学の野球部員ですが、常に他校との合同チームになる心配と戦っています。小学校高学年のとき、クラスの男子で野球のルールを知っていた者は、数名に過ぎませんでした。ひとクラスに「背番号3」が5人もいた私の時代には考えられないことです。 ■野球の裾野が枯野になっている 部員減少のひとつの理由は、専門チャンネル以外でのベースボール・コンテンツが激減してしまったことでしょう。現在、スカパー! (CS)やDAZN(ネット)以外で、試合中継は何試合やっているでしょうか? 実に少なくなってしまいました。