6月東京都区部消費者物価はやや上振れ:円安阻止に重きを置いた当面の金融政策
電気・ガス代補助金の削減の影響に加え、サービス価格もやや上振れ
総務省は6月28日に、6月分の東京都区部消費者物価統計を公表した。コアCPI(除く生鮮食品)は前年同月比+2.1%と2か月連続で高まり、3か月ぶりに日本銀行の物価目標である2%を上回った。 6月の消費者物価は、電気・ガス代補助金の削減の影響で押し上げられた。7月にも電気・ガス代補助金の削減の影響から消費者物価の前年比上昇率がさらに上振れる可能性が高い。他方、政府は8月から電気・ガス代補助金を3か月間復活させる予定であり、電気・ガスの使用分の料金が請求される9月から11月の間、全国消費者物価は前年比で+0.5%程度下振れる見通しだ。 6月分の東京都区部消費者物価は、電気・ガス代補助金の削減の影響を除いても、予想比で上振れた。エネルギー関連の政策変更の影響を受けないコアコアCPI(除く生鮮食品、エネルギー)は季節調整済み前月比で+0.3%と高めに振れた。前年同月比も+1.8%と5月の+1.7%を上回った。 6月は宿泊料が消費者物価の前年同月比を0.05%押し上げた。ルームエアコンなど家庭用耐久財も、前年同月比を+0.04%押し上げた。足もとで低下を続けていたサービス価格は、6月は前年同月比+0.9%と前月の同+0.7%から上昇した。宿泊代の上昇の影響に加えて、医療・福祉サービスや外食が押し上げに貢献した。外食の価格上昇は、トマトなど生鮮野菜の上昇や円安による輸入食材価格上昇の影響によるところが大きく、賃金上昇の影響は必ずしも大きくないとみられるが、医療・福祉サービスでは賃金上昇の影響も考えられる。
賃金上昇分の本格的な価格転嫁の動きはなお確認できない
賃金上昇を伴う持続的な2%の物価上昇が実現されるかという観点から、日本銀行は賃金上昇分の価格転嫁の動向に注目してきた。実際にはサービス価格の上昇率は、昨年末以降、頭打ちから低下傾向に転じている。ただし、6月分の東京都区部消費者物価の数字を踏まえると、6月全国消費者物価統計でも、サービス価格の上昇率は再び高まることが予想される。しかし、これが、賃金上昇が本格的に価格転嫁され始めた兆候と考えるのは早計だろう。 日本銀行は、賃金上昇がサービス価格に本格的に転嫁される動きは消費者物価統計では確認されないものの、企業サービス価格が上振れている点に注目していた。ただし、年明け後に一時上振れていた企業サービス価格の上昇率も、6月分では前月比-0.1%、前年同月比+2.5%と予想外に大きく下振れ、賃金上昇がサービス価格に転嫁される期待を挫いたのである。