トムソン・ロイターが法務特化型生成AIツールをローンチ、法律業務における生成AI活用の本格化
信頼と正確性、利用する側の知識へのニーズ
ゴールドマンサックスの2023年の試算で、44%の法務タスクがAIによる自動化が可能(全業界平均は25%)であると判明。これは弁護士が仕事を奪われるという意味ではなく、今後AIを活用しない法律事務所がクライアントから選ばれなくなる可能性があるということを示唆している。 一方で、PwCの調査では、アジア太平洋地域の最高法務責任者の80%以上がAI駆動のリーガルテックに関する自身の知識を平均以下だと回答。ただし従業員のAIスキルの向上に投資すると回答した同地域のCEOが73%に上るなど、法曹界におけるAIの活用は加速する見込みだ。 2023年5月に、ニューヨーク州の弁護士が民事裁判の資料作成にChatGPTを使用した結果、AIが生成した実在しない判例を引用してしまうという事件も記憶に新しい。AIの信頼性を当初問う声が多く聞かれた中で、後にこのケースはツールのミスではなく利用した弁護士の知識不足だと指摘する声が増えたのも興味深い。信頼と安全性が何よりも優先される法曹界で、ハルシネーションを起こさない信頼のおける生成AIの活用は喫緊の課題だ。 Casetextの弁護士やプロンプトエンジニアが莫大な時間をかけて学習させたプラットフォームであるトムソン・ロイターのCoCounselは、いま法曹界でのAI活用のトップを走っているとされる。さらに現在CoCounselは米国だけでなく、カナダとオーストラリアへの展開も発表している。ただし、こうした専門家向けのAIは利用料金が非常に高額であることも懸念事項だ。 この先、競合他社の台頭も十分に考えられる中、こうした課題の解決と共に利用する側のスキルアップも求められている。
文:伊勢本ゆかり/編集:岡徳之(Livit)