食事制限のある人に朗報…塩を足さずに「減塩食」がおいしくなる「奇跡のスプーン」があった
キリンホールディングスが本数限定でオンライン販売を開始した『エレキソルト』。パッと見はプラスチック製の大ぶりのスプーンだが、実は柄の中にコンピュータと電池が内蔵され、電気で塩味を強化する次世代家電である。 【マンガ】メルカリで、利益がほとんどでない「300円出品」をする人の理由 この技術を開発したのは、明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 宮下研究室だ。味覚をテクノロジーで変化させる、いわば味テックを発信する現場だ。同研究室を率いる明治大学総合数理学部の宮下芳明教授に、テクノロジーは味覚を変える新しい世界を案内いただいた。
電気で塩味が強くなる？ 不思議な「エレキソルト」
エレキソルトは「電気味覚」と呼ばれる生化学現象を利用している。 塩味は塩のナトリウム分が舌に引きつけられて味蕾と結合し、感じられるが、この引き付ける力はマイナスの電流だ。そこで電流を体に流してマイナスの力を強くし、より多くのナトリウムが舌の味蕾にくっつくようにしてやると「塩味が強く」なる。 エレキソルトには電池とコンピュータが内蔵されていて、、スプーンを手に持つと微弱な電流が体に流れる。電気の力で塩味を強化するスプーンがエレキソルトなのだ。 この電気の流れるスプーンを何に使うのか？ 駅前に次々に透析センターができることでわかるように、腎臓が悪くなり、食事に塩分の制限がある人は多い。こうした病気の人たちの食事は減塩食になるが、塩味のないご飯は本当においしくない。減塩食が苦手で食事が進まず、健康状態が悪くなる人もいる。 エレキソルトを使えば、塩を足すことなく塩味が強化されるため、減塩食でも普通の制限のない食事のようにおいしく食べることができるという。 エレキソルトの体験会に参加し、塩味があまりしない減塩カレーをエレキソルトを使って食べてみた。初めて食べた減塩カレーは味がなかった。一番おいしくて一番まずい食べ物は？ 答えは塩というなぞなぞがあるが、まさにその通り。減塩カレーは本当においしくなかった。 エレキソルトを使うと、味のなかったカレーから味がする。普通のカレーのようにおいしいかと言えば、そこまでではないが、何もしないよりだいぶマシだ。面白かったのは、塩味だけではなくカレーの味全体がおいしくなったことだ。試しにカレーに塩味を少し足し、エレキソルトのみで食べたカレーの味を比較したら、あきらかにエレキソルトで食べたカレー方がおいしくなっていた。 電気味覚で強化される味は塩味だけではなく、うま味も強化されるという。うま味成分も塩味と同じくマイナスの電流に反応し、舌に引きつけられるするためだ。そのため、カレーのうま味も強化され、おいしくなったのだ。
