旅行者の恩恵は想像以上かも…東京メトロ有楽町線・南北線の延伸「開業が待ち遠しい」と言えるワケ
東京メトロは11月15日、有楽町線の延伸(豊洲~住吉)および南北線の延伸(品川~白金高輪)の工事に着手した。また、10月23日には東証プライム市場に上場を果たしている。初値は1630円を記録し、売り出し価格(1200円)を36%上回る好調なスタートとなった。 【マンガ】工事現場の「交通誘導員」はいくら稼げる? 驚きの最高月収 このように話題が続く東京メトロだが、首都圏以外の住民にとっては、一見すると新線の延伸は関係のない話に思えるかもしれない。しかし、今回の新線は株式上場と連動し、観光にも役立つ路線となる可能性を秘めている。
株式上場と延伸の関係性
有楽町線延伸は、有楽町線豊洲から東西線東陽町を経由し、住吉へ至る全長4.8キロの路線である。住吉では半蔵門線と都営地下鉄新宿線に接続する。途中駅として枝川、東陽町、千石(いずれも仮称)が設けられる予定である。一方、南北線延伸は南北線白金高輪から品川まで至る全長2.5キロの路線であり、有楽町線延伸とは異なり途中駅は設けられない。 2024年12月現在、両路線ともに開業は2030年代半ばを予定している。また、今回の新線は「延伸」とされているが、終着駅から延びるわけではない。起点駅となる豊洲や白金高輪は中間駅であり、形態としては支線に近いものである。 ところで、先述したように東京メトロは10月に上場したが、この上場には新線計画も深く関係している。東京メトロの前身は1941年に設立された帝都高速度交通営団(営団地下鉄)である。2002年に施行された「東京地下鉄株式会社法」に基づき民営化され、現在の形態となった。 しかし、東京メトロ株は長らく国と東京都が保有しており、上場は進まなかった。背景には、都営地下鉄と東京メトロの一元化構想があったからである。東京都はこの一元化に積極的であったが、東京メトロは多額の累積損失を抱える都営地下鉄との一元化に消極的であった。小池知事就任後、統合論は鳴りを潜め、東京メトロと協力する方針に転換した。 転機となったのは2021年7月に国交省の交通政策審議会から出された答申だ。この答申では、東京メトロが主体となって両新線を早期に進めるべきとされた。株式上場については、「国と東京都が当面、株式の2分の1を保有することが適切である」としつつも、「(両新線の)事業主体となることと一体不可分のものとして、東京メトロ株式の確実な売却が必要である」という考えを示していた。 この答申を受けて、株式上場と両新線計画の道筋が明確になり、2022年3月には国交省から新線の事業認可が下りたという経緯である。