「希望ではなく断絶を描くべきなんだ」映画『ふれる』髙田恭輔監督、細部までこだわった映画製作を語る
第45回ぴあフィルムフェスティバル2023にて準グランプリを受賞し、9月27日(金)よりテアトル新宿にて限定公開される映画『ふれる』の監督を務めた髙田恭輔さんにインタビューを敢行。セリフを特定せず、ト書きのみで構成された台本を基に、俳優たちと作り上げた本作について、じっくりとお話を伺った。(取材・文:福田桃奈)
「関係が断絶することを描きたい」 俳優たちと交わした対話
ーー本作は母親の喪失に向き合う少女とその家族の物語です。大人たちの優しさが子供を介さず、すり抜けている感じや、大人同士のやり取りも、互いが傷に触れないようにすることで、逆に傷つけ合ってるように見え、とても切なくなりました。セリフを特定せずに、俳優たちとの対話で作り上げたそうですが、どのようにして企画から物語へと発展させていきましたか? 「“ふれる”とか、“何かに触る”とか、“何かに出会う”みたないことを肯定的ではない部分も含めて描きたいというのがあって、企画書の一行に、“生きることは困難だ”と書いたんですけど、大人になるにつれて子供みたいに痛みの部分に簡単には触れられなくなって、関係が断絶するみたいなことを描きたいと思いました。 実際にワークショップで俳優さんたちにお芝居をしてもらった時に、自分の頭の中だけで想像していたよりも、さらに痛みがこちらに迫ってくる感じがあり、どんどん物語の核心へと近づいていきました」 ーー監督の頭の中にあったものが、実際に俳優の身体を通したことでリアリティを帯びたということですね。ワークショップから撮影に至るまでは、どういった流れだったのでしょうか? 「ワークショップでは、大人がどういう距離感で主人公の美咲に接すればいいのかを探り続ける時間だったのですが、美咲役の鈴木唯ちゃんが現場でどう動くか分からなかったので、プランは練っておくけど、それが現場で崩れても成立することを念頭に置いて、みんなで一緒に作っていきました。 クランクイン前にロケ地でリハーサルを行ったんですけど、その時は唯ちゃんにも来てもらって、大人たちとの関係性を作ってもらいました。ただそのリハーサルはお芝居というよりも、それぞれの関係を構築していくような時間だったので、現場に入るまではどうなるのかとそわそわしてたんです。 でも実際に現場に入った時は、大人たちが自分のやるべきことを背負って美咲を迎え入れてくれた感じが凄くあったので、とても安心しました」 ーーお芝居については、俳優たちに任せることが多かったのでしょうか? 「そうですね。でも任せるというよりは確認し合うというか、放置は絶対にしたくなかったので、最後まで責任を取りたいと思っていました。なので『どう思いますか?』と聞いて、俳優さんの中で何かがあれば受け取るし、無かった時も話し合いながら作っていきました」