「希望ではなく断絶を描くべきなんだ」映画『ふれる』髙田恭輔監督、細部までこだわった映画製作を語る
「希望ではなく断絶を描くべきなんだ」 現場で発見した本作の核心
ーー脚本に忠実に従うのではなく、現場で発見したことを大切にされたそうですが、大きく変わった点はありましたか? 「脚本から大きく変わったのは病室のシーンで、脚本上では美咲が事故を起こして怒られた後に、病室を出て駐車場まで1人走っていき、それを追ってきた父親が抱きしめるという優しい場面を想定していました。 段取りまでは、美咲に逃げさせようとしていたんですけど、本番ではお父さんがわーっと泣いているのを美咲が最後まで目の前で受け止めていたので、これは逃げないなと思ったんです。 最初にこの物語で断絶を描きたいと思っていたことが、このシーンのお芝居を現場で見た時に一番真に迫っていたので、希望を描くのではなく断絶を描くべきなんだと教えてもらった場面でした。だから美咲はそこから逃げなくていいし、父親も抱きしめずに、その距離を保ったまま進むという方向性にしました」 ーーリテイク(撮り直し)は結構されましたか? 「テイク数を凄く重ねるわけではないんですけど、即興だと粗が出たりして、それが上手く作用する時もあるんですけど、俳優さんに負荷を与えてしまっているというのが見える時は、撮り直しをしました」 ーー俳優に負荷がかかっている時に、監督はどのようなお声がけをしましたか? 「僕の方から声をかけてしまうと、『こうしなきゃいけない』と頭を使わせてしまうと思ったので、相手側の俳優さんにバランスを取ってもらいました。 例えば、安心できていない本人に『安心してください』というのはできないので、受け手の俳優さんに『相手が安心できるような何かをプラスして打ち込んでください』とお願いしました。 今回は相手が出したものを受け取れる俳優さんたちだったので、そういうやり方ができました」 ーー主人公の美咲役を演じた鈴木唯さんのお芝居がとても素晴らしかったです。どんなところに惹かれキャスティングをされましたか? 「構想を練っている時に、主人公の女の子が何を見ているかがめちゃくちゃ大事な映画になると確信していました。なので目がいい子にお願いしたいという気持ちがありました。 唯ちゃんは目の前のことに対してビビットに反応すると同時に、向こう側を見る表情がズバ抜けて良かったんです。あとはオーディションって、緊張もするし、役割も決まっている場所だと思うんですけど、唯ちゃんは“こういう時はこうする”という固定概念をぶち壊して、ほぐしてくれる力があったので、この子しかいないなという印象でした」