「オクラ」脚本家・武藤将吾が“令和の刑事ドラマ”で感じた世代間ギャップとは?
──実際にお二人のバディをどうご覧になりましたか? 武藤 「反町さんが元々持ち合わせている熱い感じと、杉野くんのクールな魅力という対照的なキャラクターのバディが“合っていなくて面白い”なと。バディものといえば、徐々に信頼関係を築いていく過程が描かれることが多いですが、このドラマでは2人の間の絶妙な距離感が表現されていて。お二人の演技によって、お互いにまだ気を置けない雰囲気が脚本以上に出ていたのを見て、ホッとしたというか本当にうれしかったです」
──多彩なキャストの魅力を引き出すために、脚本で意識したことはありますか? 武藤 「足立プロデューサーの素晴らしいキャスティング力のおかげで、何度も物語の変更を余儀なくされました(笑)。当初は、1話完結の物語を続けようと思っていたのですが、オクラのメンバーそれぞれにスポットを当てて背景などを掘り下げることで、物語がどんどん深みを増しましたし、この作品で伝えたいメッセージが見えてきたんです」 ──足立プロデューサーのキャスティング力によって、武藤さんが描く世界も広がったのですね。 武藤 「そうですね。当初提案したキャラクター設定に収まらないので、強引に広げざるをえなかったです(笑)。うまく引き出してもらったので、今となっては本当に感謝しています」
──足立プロデューサーと組んで制作する中で、これまで手掛けた刑事ドラマとは異なるアプローチをされたことがあれば教えてください。 武藤 「僕は刑事ドラマをやりたくて脚本家になったといっても過言ではありません。拳銃や派手なアクションなど、非現実的な世界を描くことに魅力を感じていたのですが、今回、足立プロデューサーや柳沢(凌介)監督と一緒に制作する上で新たな発見があったんです。最初、台本では拳銃を発砲するシーンがあったのですが、それを読んだ足立プロデューサーに『あまりにも現実離れしていると、共感できなくなってしまうんです』と言われて。僕が、刑事ドラマの醍醐味(だいごみ)だと思っていた拳銃などは、彼らにとってみればリアリティーのなさに直結してしまうということに、すごくショックを受けましたね。リアリティーを持って刑事ドラマとして成立させた上で、自分のやりたい世界観を表現しなければならないなと。自分にとっては大きな枷(かせ)でもあったのですが、逆に面白いなと思ったんです」 ──制作側でも世代間のギャップがあったのですね。 武藤 「フィクションでありながらも、リアリティのあるドラマというものを推し量って書きました。僕だったら、最初から非日常的な世界に引きずり込むような物語を描きがちですが、彼らとディスカッションすることで、若い世代の方たちの価値観も認識できました。僕たちの世代では、ドラマは非日常の世界を楽しむものだったのですが、今は“いかに共感を呼べるのか”というところにシフトチェンジをしていることが参考になりましたし、すごく興味深かったですね」 ──では、足立プロデューサーが感じる刑事ドラマの魅力について教えてください。 足立 「やはり、チーム一丸となって事件解決を目指す姿がカッコいいですよね。『HERO』(フジテレビ系/01年)でも描かれていたように、武藤さんが生み出してくださった“オクラ”も部署全員が集まるシーンがあって、そこが個人的には大好きなシーンです。オクラのメンバー一人一人が熱量高く向き合ってくださっているので、現場で生まれるものもすごく多いですし、皆さんのいろんなアイデアによって、武藤さんが書いてくださった脚本がどんどん面白くなっていると感じています」