あなたの「応用力」がたった二つの問いで判明…学んだことをしっかり身につけ、応用できる頭を作る<ある習慣>とは?
「メタ認知」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。「メタ」とは「高次の」という意味で、つまり認知(記憶、学習、思考など)を、高い視点からさらに認知することを指します。三宮真智子大阪大学・鳴門教育大学名誉教授によれば「メタ認知は自分の頭の中にいて、冷静で客観的な判断をしてくれる<もうひとりの自分>。活用次第で頭の使い方がグッとよくなる」だそう。先生の著書『メタ認知』をもとにした本連載で、あなたの脳のパフォーマンスを最大限に発揮させる方法を伝授します! 【書影】三宮先生が「頭」をよりよくする方法を伝授!『メタ認知』 * * * * * * * ◆問題 まずは一度、次の問題を考えてみてください。 <要塞問題> ある国の将軍は、独裁者から国を解放するために、国の中央にある要塞を攻略しようとした。そのためには大群で攻め込む必要があるが、要塞に通じる放射状の道路には地雷が埋めてあり、大群で通ると爆発する。どうすれば、地雷を爆発させずに攻略することができるか。 これは、なかなか難しい問題だと思います。早く答を知りたい方のために、先に言ってしまいましょう。「小部隊に分かれて四方八方から進み、要塞で結集する」というのが答です。では、次の問題はいかがでしょうか。 <放射線問題> ある患者は、胃に悪性の腫瘍がある。そのままでは死に至るので、腫瘍を破壊する必要がある。しかし、その患者には体力がなく手術はできないため、放射線による治療を行わなければならない。強い放射線を当てれば、腫瘍は破壊できる。しかし、腫瘍は体の内部にあるため、外から強い放射線を当てると健康な組織も破壊されてしまう。どうすれば、健康な組織を傷つけずに、腫瘍だけを破壊することができるか。 こちらも答を言ってしまうと、「四方八方から弱い放射線を照射し、腫瘍で集結させる」というものです。
◆なぜ学びを活かせなかったのか さて、あなたは気づいたでしょうか? 実は、先ほどの要塞問題とこの問題の解決法は、同じ構造を持っています。 それは、「四方八方から送った小さな力を集結させて大きくし、標的をアタックする」という構造です。 アメリカの大学生を対象に行った実験では、まず「要塞問題とその答」をセットにして呈示した後、放射線問題を出して解決法を考えてもらいました*1。 その際、この要塞問題が放射線問題の解決に関係があるというヒントを与えた場合には、約80パーセントの学生が正しく答えました。これはかなり高い正答率ではありますが、明らかなヒントがあったにもかかわらず、100パーセントには届かなかったのです。 一方、ヒントを出さずに、「要塞問題とその答」を示した後に放射線問題を考えてもらうと、正答できたのは40パーセント程度にしかなりませんでした。 放射線問題だけを単独で出した場合の正答率は、たったの10パーセントでしたから、さすがに、直前に見た要塞問題とこの問題が同型であることに気づいた学生たちがいて、正答率が上がったのでしょう。 それにしても、この結果は、約60パーセントの学生が、二つの問題の同型性に気づかなかったということを示しています。せっかく直前に学んでいながら、なぜ、その学びを活かせなかったのでしょうか。