米SECゲンスラー委員長に厳しい非難、「暗号資産」の公聴会で
米国証券取引委員会(SEC)のゲーリー・ゲンスラー委員長は、デジタル資産の規制に関するSECの対応を巡り、議員から厳しい追及を受けた。米議会下院の金融サービス委員会は9月24日、暗号資産の規制をめぐる公聴会を開催した。 委員会のチェアマンを務める共和党のパトリック・マクヘンリー議員は、ゲンスラー委員長が「かつては誇り高かったSECを無法な機関に変えた」と非難し、SECが適切な経済分析や公的な関与を得ずに暗号資産業界の規制を行っていると指摘した。SECの強硬な規制は、コインベースのような大手取引所から分散型金融(DeFi)のUniswap、さらにNFTのマーケットプレイスのOpenSeaなどのプラットフォームにまで及んでいる。 ゲンスラー委員長に対する批判の声は、SECの内部からも噴出した。以前から暗号資産業界の擁護派として知られ、「クリプト・ママ」と呼ばれるSECのヘスター・ピアース委員は、SECが「規制の明確さが欠如していることを隠すために、法的に曖昧な見解をとってきた」と主張した。ピアース委員はまた、SECの規制の曖昧さがトークンの2次取引や取引所への上場を難しくしているという主旨の発言を行った。 一方、民主党のリッチー・トーレス議員は、SECが恣意的なアプローチでさまざまな資産を証券に分類していることが、業界のイノベーションを阻害していると主張した。トーレス議員は、ゲンスラー委員会が率いるSECがOpenSeaのNFTを証券に分類したことに異議を唱え、「そのロジックでは、ほぼすべてのコレクティブルや消費財、芸術作品、音楽が証券になりうる。境界線が曖昧になっている」と主張した。 ゲンスラー委員長のアプローチは、暗号資産業界外の超党派の議員たちからも批判されている。最も論争を呼んでいる問題の一つは、暗号資産を保管する企業に対し、それらの資産を自社の貸借対照表に負債として計上するよう義務付けるSECの会計ルール「SAB121」で、従来の会計慣行から逸脱しており、暗号資産の保管コストを法外なものにすると批判されてきた。このルールはまた、暗号資産ビジネスを拡大しようとする銀行に過重な資本要件を課すものとして、超党派の反発を呼び起こし、33人の民主党議員が共和党とともに撤回に賛成票を投じていた。 ■政治的影響力を高める暗号資産業界 一方、下院金融サービス委員会の筆頭委員を務める民主党のマキシン・ウォーターズ議員は、より慎重なトーンでSECの管轄を超えた立法措置の必要性を強調した。「私たちは、今年中にステーブルコインやその他の長らく滞っている法案についての大きな進展を起こしたい」とウォーターズ議員は述べ、議会が業界で長い間待ち望まれていた動きを起こす可能性を示唆した。 規制上の混乱の中においても、米国の政治に暗号資産業界が及ぼす影響は劇的に拡大している。この新たな政治的影響力の象徴が、リップルやアンドリーセンホロウィッツ、コインベースなどの主要な暗号資産関連の企業が資金を提供するスーパーPAC(特別政治活動委員会)のフェアシェイク(Fairshake)の台頭だ。 CNBC は、2024年の選挙サイクルにおいてフェアシェイクが、下院と上院の予備選35選挙のうちの33選挙で勝利した候補者を後押しし、ユタ州、カリフォルニア州、ニューヨーク州などで顕著な勝利を収めたと報じていた。
Nina Bambysheva