愛情深い親ほどやってしまう…じつは「幼い子ども」相手に「やらないほうがいいこと」
日本は今、「人生100年」と言われる長寿国になりましたが、その百年間をずっと幸せに生きることは、必ずしも容易ではありません。人生には、さまざまな困難が待ち受けています。 【写真】じつはこんなに高い…「うつ」になる「65歳以上の高齢者」の「衝撃の割合」 『人はどう悩むのか』(講談社現代新書)では、各ライフステージに潜む悩みを年代ごとに解説しています。ふつうは時系列に沿って、生まれたときからスタートしますが、本書では逆に高齢者の側からたどっています。 本記事では、せっかくの人生を気分よく過ごすためにはどうすればよいのか、『人はどう悩むのか』(講談社現代新書)の内容を抜粋、編集して紹介します。
教えて待つ
幼児期前期には自律性が育つとともに、欲望や衝動を自制し、状況に応じた行動を学んでいく必要があります。社会的適応行動の第一歩です。 たとえば、食事のときには座って食べる、ものをこぼさない、静かにすべきところでは大声を出さないなどです。さらに年齢が進むと、公共の場では走りまわらない、外から帰ってきたら手を洗う、出したオモチャは片付ける、咳をするときは口に手または腕を当てる、友だちのオモチャを取らない、ほしいときには「貸して」と言う、順番を守る、悪いことをしたら謝る、何かをしてもらったら「ありがとう」と言うなども教えなければなりません。 このような躾以外にも、積み木や幼児向けのパズル、ブランコや滑り台などの遊び、三輪車や自転車の乗り方、お絵かきや歌、さらには文字や数字の習得など、勉強に近いことも教えていきます。 このとき親にとって大事なことは、「教えて待つ」ということです。愛情深い親は子どもが戸惑ったり失敗したりしたとき、つい手を出してしまいます。子どもは失敗を繰り返すことで、どうすれば失敗しないかを自分なりに試行しているのです。親が手を出せば、考える力、解決する力が育ちません。すぐに手を貸すことを続けていると、子どもはそれに慣れて、自力でやることを簡単にあきらめ、親に助力を求めるようになります。子どもが失敗を繰り返しても、じっと見守ることは意外に忍耐のいることで、せっかちな親にはハードルの高い試練になります。 娘夫婦が幼い孫を躾けているのを見ていても、言うことを聞かないので怒ったり、さっさとしないことにイラついたり、失敗を繰り返すことを嘆いたりしています。感情的になって声を荒らげたり、けっこう早めに手を貸したりしているので、もう少しようすを見たらと思いますが、娘夫婦を成長させるためにも、彼らを「じっと見守る」ようにしています。 さらに連載記事<じつは「65歳以上高齢者」の「6~7人に一人」が「うつ」になっているという「衝撃的な事実」>では、高齢者がうつになりやすい理由と、その症状について詳しく解説しています。
久坂部 羊(医師・作家)