脳科学者が考察。「叱らない教育」は本当に正しいのか?
「叱らずにほめる」。子育てでも企業の社員教育でもメジャーになってきているが、これは本当に効果があるのか? 3万人以上に講演してきた脳科学者・西剛志が、科学的な見地から探った。
日本で見られる親の4つのタイプ
昭和の時代までは、悪いことをしたらお尻を叩かれたり、厳しく注意されることが日常茶飯事でした。私も子どもの頃、いたずらが大好きで、障子に穴を開けたり、学校の裏に秘密基地をつくっては、叱られたのをよく覚えています。 親にはいろいろなタイプがありますが、現在までの子育ての研究によって、親は大きく次の4つのタイプに分かることが分かってきました。 1966年に心理学者ダイアナ・バウムリンド博士が子育てのタイプを「3つの子育てスタイル」に分け(*1,2)、その後、スタンフォード大学の研究で「もう1つのスタイル(放任型)」が加えられ(*3)、現在はこの「4つのタイプ」で説明できると考えられています。 ① 支援(民主型)タイプ(厳しい+優しい) ルールを守ることを促し、高い要求も求める(厳しさもある)が、子どもの意向も同時に尊重して自立を促すタイプ。 ② 厳格(独裁型)タイプ(厳しいだけ) とにかく、頭ごなしに子どもに厳しく接するタイプ。従わない場合は、罰を与えて強要する。 ③ 迎合タイプ(優しいだけ) 「優しいばかり」の受身的なタイプ。とにかく子ども中心で、やりたいことを実現させてあげる。ルールを決めて守らせる厳しさはほぼない。 ④ 放任タイプ(無視/子どもに関心がない) 子どもに無関心なタイプ。厳しくもないし、優しく接することもない。ルールを決めることもない。 まさに今流行っている「叱らずにほめる」子育ては、3番目の「迎合タイプの子育てスタイル」になるでしょう。
親のタイプで年収が変わる!?
このように世の中には様々な親のタイプがありますが、以前紹介した記事の通り、2016年の日本人の1万人の研究から、親のタイプが子どもの将来の年収にまで影響する可能性が指摘されています(*4)。 ちなみに「優しいだけ」の迎合タイプは、下記の通り、年収ランキングでは449万円(第3位)と低い順位となりました。 <親のタイプによる年収ランキング> 第1位:支援タイプ(厳しい + 優しい) 年収530万 第2位:厳格タイプ(厳しいだけ) 年収501万 第3位:迎合タイプ(優しいだけ) 年収449万 第4位:放任タイプ:(無視) 年収360万 ※男の子のデータになります。 第1位は「支援タイプ」と呼ばれる「厳しい+優しい/ほめる」親の元で育った子でした。平均年収は530万円。優しいだけの「迎合タイプ」より年収が約80万円も高くなりました。 厳しいだけの厳格タイプは第2位。ただ、年収は高くても、メンタルの状態が最高ではなく、前向きさが低く、不安を感じやすく、人に積極的に関わろうとする社会的なスキルは低い傾向にあったようです。 最悪なのは『放任タイプ』で、支援タイプと比べて年収が170万円も下がる傾向(第4位)にありました。