マイクロソフトよりHRテック企業の方が「時価総額で高成長率」な時代になる理由【尾原和啓のHR TECH最前線】
CFOの時代→CIOの時代を経て「CHROの時代」に変わる
情報革命と少子高齢化によって、労働者は足りなくなっています。人余りの時代から、スキルを持つ人材がどんどん足りなくなっている。農業革命とか工場・機械の時代というものは、いかにCFO(最高財務責任者)が金融的にレバレッジして、どれだけの農場を増やすんだ、どれだけの工場を増やすんだということが企業の成長レバーになっていた。 対して、情報革命の時代には、いかにシステム化するかが大事で、CIO(最高情報責任者)の時代になった。 今はその次です。インフォメーション自体がコモディティ化していくと、「人間とAIの分業」を考えるCHRO(最高人事責任者)が、会社としてのコアコンピタンス(競合他社に真似できない、企業価値の源泉)になってくると思われるわけですね。 もう少し掘り下げてみます。 企業の「仕事」がどう出来上がっているのかというと、非常に複雑です。 中心的に言えば、「いかにスキルやタレントをマネージしていくか」ということですが、結局、新しいスキルをどうやって育てていくのか? だったり、ジョブとスキルの結びつけみたいなものを、いかに単純化していくかだったりするわけです。 一方で、Softbank Worldで宮川さんが言ったように、AIに代替しにくく最も不足しているのは「プロジェクトリーダーシップを取っていける人材」だったりします。 リーダー人材って、どんどん流動化して外に出ていきます。その中で、経営を担う後継者も含めて、「どうやって経営トップを支えていくのか」というリーダーシップのパイプラインが大事になってくる。 それをやっていくためには、組織の「外」ではなく、内部でのキャリアのパスをいかに作って、内部での人材流動性を高めつつ、働いてる人たちができるだけ長く働ける状況を作っていく必要性がある。 一方で、専門性を必要としない人材は、ギグワーカーだったり、コントラクトワーカーみたいな形で、柔軟にアウトソース化していく。企業の組織全体として、チームで機能をしていくような「労働力」をどうやって作って、マネージしていくのかということが大事になる。 非常に複雑だ、と言ったのは、このような側面があるからです。 従って、AIを取り入れたHR Techが、より複雑な領域に入ってくると、おそらくは「1つの会社でたくさんのHRツールを使っていくことが当たり前」になります。
尾原和啓