築100年の京都の古民家リノベで多数受賞!斬新なアイデアで話題を呼んだ注目の若手建築家・萬代基介インタビュー
その敷地、その住み手、その周辺環境…プロジェクトごとに異なる要件を丁寧に読み解き、唯一無二の答えを導き出す――。それは、建築家という職能の基本ともいえますが、その根幹に実直なまでに向き合い、秀でた才能をうかがわせるのが萬代基介さんです。 【写真で眺める】今まで見たことがないような古民家の再生!驚きのプランはどのように生まれた? 萬代さんは、日本を代表する建築家、石上純也さんの事務所で6年間勤務した経歴のもち主。 2012年の独立後も、数々の公共事業、多ジャンルの店舗デザインやエキシビションの会場構成などを手掛け、最近は大阪・関西万博の休憩所の設計コンペで選定されるなど、活躍の場を広げ続けています。 萬代さんのフィロソフィーを聞くインタビュー、そして代表作をご覧に入れます。
萬代さんの設計哲学/その場に相応しい建築のあり方を徹底的に分析する
設計で大切にしていることは何ですか?と尋ねました。 「建築単体でものを考えないことですかね。人であったり、自然であったり、文化や歴史的背景も含めた周辺環境であったり。僕が生み出す建築を介して、どんな“つながり”や“関係”をつくり出せるか、そこに興味があります。一期一会じゃないですが、その場所でしかできないこと、その場所だから価値をもつことを常に考えています」 「建築は基本的に何かの背景である」、とも。 萬代さんは背景と表現しますが、それは、変哲のない建物という意味とはもちろん違います。 そこに建築があるからこそ、初めて自然の心地よさを享受できたり、ライフスタイルが豊かになったり、あるいは地域の歴史や文化の継承を実感できたり。 萬代さんの設計が、そこにある潜在的な魅力をすくい上げ、一層感じさせる媒介になることを目指しているといいます。 そんな萬代さんの考えを物語る作例がこちら。発表直後から話題を集め、日本建築設計学会賞やグッドデザイン賞BEST100など多くのアワードも受賞した住宅実例をご紹介します。
実例/築100年の古民家を再生。当初は取り壊しの案も!?
この建物は京都に立つ築約100年の家屋をリノベーションしたプロジェクトです。 クライアントは、自身のリタイア後に生まれ育ったこの地に戻り、家族や親戚が集まってこられる住まいにしたいと考え、萬代さんに設計を依頼しました。 昔ながらの生け垣に、立派な庭、そのなかで控えめに佇む母屋。そして、100年という年月で築かれた近隣との関係。当初は新築する案も検討していましたが、家族の記憶や建物の歴史を継承するために、改修するという選択肢に至ったといいます。