デジタル広告 の未来を探る:「このままでは広告という仕事の創造性が失われ、面白いと感じることもできなくなる」JICDAQ 事務局長 小出誠 氏
デジタル広告の未来を探る、DIGIDAY[日本版]インタビューシリーズ。今回は、デジタル広告市場の健全化を目指して立ち上げられた一般社団法人デジタル広告品質認証機構(以下、JICDAQ)の小出誠事務局長に、昨今のデジタル広告にはびこる課題を聞いた。 小出氏は、1984年に資生堂に入社し、商品開発部、宣伝部、経営企画部を経験したのち、同社のコミュニケーション統括部長に就任。その後、2015年からは資生堂ジャパンのコミュニケーション統括部長、そしてメディア統括部長を歴任してきた人物だ。国内屈指のブランドにおいてメディア戦略とブランドコミュニケーションを担い、現在はJICDAQの事務局長としてデジタル広告の健全化に努めている。 そんな小出氏はデジタル広告市場の現状について、「広告における不文律が崩壊している」と嘆く。DIGIDAYでは、元広告主として、そしてJICDAQの事務局長として、同氏にデジタル広告市場の問題点を聞いた。小出氏が不安視するのは、デジタル広告伸長の副作用とも言うべき業界全体で起きている広告そのものの魅力の低下と、それに対する広告主の危機感の希薄さだった。 ◆ ◆ ◆
──現在の日本市場におけるデジタル広告について、小出さんが考える主要な問題点を教えてください。
生活者の観点から見ると、広告のクリエイティブやフォーマットが「邪魔」と捉えられてしまっている現状が問題点と言えるだろう。また、ビジネスの観点では、アドフラウドやブランドセーフティなどに代表されるデジタル広告の掲載品質に関係する課題が、日本は世界的に見ても悪い状況にあることが問題だ。残念なことに、この認識は広告主にあまり広まっておらず、ブランド全体でみると対策も積極的にとられていない。 現在のデジタル広告市場は、デジタル広告ならではの出稿プロセスの影響から、かなりの部分で広告における不文律が崩壊してきている状況に思える。広告を出すという行動において、掲載フォーマットや掲載面は気にしなければいけないものだが、これらの大切さが忘れ去られた市場になってしまっている。広告出稿費のシェアが最大となったデジタル広告市場がこのような状態では、広告のあり方を歪めてしまうのではないだろうか。