最高裁で勝訴「67年間苦しんできた。こんなに嬉しいことない」14歳で”強制パイプカット”された夫、意を決して妻に秘密打ち明けた 旧優生保護法は憲法違反、国に賠償命令
◆『子どもが何でできないのかな』と話す妻 意を決して秘密を打ち明けた
北さんは20代後半で結婚したものの、妻には、自分が子どもを作れない体だと打ち明けることはできませんでした。養子を迎え入れようと持ちかけたこともあったといいます。 (北三郎さん) 「(妻は)ポツンと私に言いましたよ。『子どもが何でできないのかな』って」 「(養子の候補を)どの子がいい?と女房に写真を見せたんだけれども、あなたの子どもでないとダメだということを言われた時には断念しましたよ」 妻が白血病に倒れて亡くなる直前、北さんは、意を決して“秘密”を打ち明けました。 (北三郎さん) 「『産婦人科に連れていかれて、パイプカットをやられた』と。『そのために子どもができなかったので、本当に申し訳なかった』と言いましたよ」 ――本当の事を言った時、奥さんはどんな反応だったんですか? 「うつむいて、しばらくは黙っていて、『ご飯だけはちゃんと食べてね』と言って、まもなく(2、3日後に)息を引き取った」 夫の嘘を責めることはなかった妻。最期の会話でした。
◆「国に謝ってもらいたい」最高裁は憲法違反と断定
2018年に仙台での国賠訴訟の報道を見て、ようやく自分が受けたのは優生手術だと認識し、訴えを起こした北さん。国の責任を認める判決を勝ち取り、人生のひとつの区切りにしたいと願ってきました。 (北三郎さん) 「自分の体はもう取り返せない、人生も取り返せない」 「一言でもいいから国に謝ってもらいたい気持ちがあります」 そして迎えた注目の判決。3日午後、最高裁は旧優生保護法について憲法違反と断定しました。
◆“20年ルール”の適用は「到底容認できない」
改正前の民法が定めた除斥期間(=賠償を請求する権利は不法行為から20年が経てば消滅するという原則)について、最高裁は「今回の原告らに適用することは著しく正義・公正の理念に反し、到底容認できない」と指摘。 大阪・兵庫・東京・札幌の4訴訟・8人の原告に対し、総額1億円あまりの賠償を国に命じました。(2審で原告が敗訴していた仙台訴訟は仙台高裁に差し戻し) 東京訴訟の原告・北三郎さん 「こんな嬉しいことはありません」 「(他にも被害者はいるし)まだ全面解決になっていないんじゃないか」 「みなさんの全面解決をしてもらいたいという気持ちでおります」 兵庫訴訟の原告・小林宝二さん 「喜美子も天国から見て喜んでくれていると思います。この判決を待っていました、(提訴から)6年間長かったです」 最高裁は裁判官15人のうちの多数意見として、本人の同意があった不妊手術も「そうした同意を求めること自体が個人の尊厳に反する」として、強制にあたるという見解も示しました。 (MBS大阪司法担当 松本陸)