2024年10月20日、ペンシルバニア州のマクドナルドを訪れたドナルド・トランプ。

ドナルド・トランプが2024年10月20日、ペンシルベニア州のマクドナルドを訪れた。 大統領候補たちがこのファストフードチェーンを選挙戦で活用してきた長い伝統がある。 マクドナルドは食事をする場所であるだけでなく、多くのアメリカ人にとって雇用主でもある。 2024年10月20日にドナルド・トランプ（Donald Trump）がマクドナルド（McDonald's）を訪れたことは、大統領候補者たちが今もファストフードチェーンは有権者に親近感を抱かせる大きな存在と捉えていることを示している。 選挙運動中にゴールデン・アーチ（マクドナルド）を持ち出す候補者は、トランプが初めてではない。ミット・ロムニー（Mitt Romney） は2012年の大統領選に共和党から出馬した際、このチェーン店のフライドポテトを記者に配った。ビル・クリントン（Bill Clinton）の朝のジョギング中にアーカンソー州のマクドナルドに立ち寄る習慣は、1992年の大統領選出馬中に注目を集め、コメディバラエティ番組の「サタデー・ナイト・ライブ（Saturday Night Live）」の寸劇のヒントにもなった。 報道によると2024年10月17日、トランプ候補はペンシルベニア州フェスタービルにあるマクドナルドのドライブスルーの窓から約15分間、フライドポテトを手渡したという。ワシントンポスト（Washington Post）によると、同氏がマクドナルドにいる間、この店舗は通常営業はしておらず、このドライブスルーを訪れた人はシークレットサービスのチェックを受けなければならず、トランプ大統領が手渡す商品を選ぶことはできなかったという。 トランプがフライドポテトを配っていた理由の一部は、対立候補であるカマラ・ハリス（Kamala Harris）が1983年の大学生時代に、マクドナルドで働いてお金を稼いでいたと話したからだ（トランプ陣営はそんなことはなかったと繰り返し反論しているが、何の証拠も示されていない）。 これに対してハリス候補の陣営は、彼女がマクドナルドで働いていたことを認めており、トランプの中産階級への理解を疑問視している。トランプがマクドナルドを訪れたという報道を受け、ハリス陣営の広報担当者であるイアン・サムズ（Ian Sams）は10月20日、「彼は、親から銀の皿の上に何百万ドルも手渡されて無駄に使ってきたので、夏休みの仕事がどんなに大変なことか理解できていない」とBusiness Insiderに話している。 雇用主としてのマクドナルドは、多くの人のキャリアや人生において重要な経験を提供している。ハリスのような候補者やジェフ・ベゾス（Jeff Bezos）のようなビジネスリーダーたちは、マクドナルドで働いたことを、自身の成長において重要な経験だったと述べることが多い。マクドナルドによると、アメリカ人の8人に1人がその人生の中でマクドナルドの店舗で働いたことがあるという。 2012年、ミット・ロムニーの副大統領候補だったポール・ライアン（Paul Ryan）は「マクドナルドでハンバーガーを作っていた時や大きなホバート（Hobart）の食器洗浄機で皿を洗っていた時、あるいはテーブルで給仕をしていた時、私は自分が人生のどこかで行き詰まっているとは考えたこともなかった」と語った。ライアンは当時、キャンプやトラック所有が好きなことと並び、自身のマクドナルドでの経験を挙げ、選挙戦で中間層のアメリカ人に共感してもらおうとしていた。 トランプが訪れたマクドナルドのフランチャイズオーナー、デレク・ジアコマントニオ（Derek Giacomantonio）は、マクドナルドでの仕事は「ハンバーガーとフライドポテト以上のものであり、チャンスにつながる重要な経験だ」とコメントしている。 また、マクドナルドは、アメリカで最も訪問者の多い小売店のひとつでもある。データ提供会社のニュメレーター（Numerator）によると、2024年6月30日までの12カ月の間に、アメリカの世帯の約87％が少なくとも一度は同チェーンを訪れているという。アメリカ証券取引委員会（SEC）に提出された最新の年次報告書によると、マクドナルドはアメリカ国内に約1万3500店舗を展開している。 だが、10月20日に社内で共有され関係者によって確認されたメモによると、マクドナルドは「政治的なブランドではない」と述べている。 そのメモには、「当社は大統領に立候補する候補者を支持することはなく、この大統領選挙においてもその姿勢は変わらない」と記されている。そこには「私たちはレッド（共和党）でもブルー（民主党）でもなく、ゴールデンだ」と書かれていた。 大統領選を目前に控え、同社がこの激戦でどちらかの側につくのは賢明ではないだろう。マクドナルドは、値段が高すぎると感じたり、ライバル店を選んだ客を失い、彼らを呼び戻すために5ドル（約753円）のセットメニューを提供したりしている。また、モーニングコンサルト（Morning Consult）が2024年初めに実施した調査によると、Z世代は上の世代と比べると、ファストフードをお得なものだとは思わない傾向があることが分かっている。