推しの「応援広告」急拡大、新宿や池袋は“聖地化”、K-POPが火付け役、数値で図れない愛を伝えたい
12月某日、都内の街頭ディスプレイに、十数台のスマートフォンが一斉に向けられた。数十秒の画像が流れる間、通行人は盛り上がる女性たちを避けながら通り過ぎていった。 【写真】池袋駅の地下通路はVtuberの「応援広告ロード」として”聖地化” これは「センイル(韓国語で誕生日)広告」の一場面だ。この日はK-POPアイドルの誕生日に合わせて、巨大な街頭ビジョンにお祝いの動画が放映された。広告枠を買って動画を流したのは、アイドルが所属する事務所ではなくファン。センイル広告が普及している韓国では、街頭ビジョンや地下鉄通路、バス停、ラッピングバス、コンビニエンスストアなど、あらゆる場所にファンが“推し”の広告を出している。
こうしたセンイル広告をファンが撮影してSNSで拡散していくことで、推しのお祝いムードは一段と高まる。数十人から資金を募ってK-POPアイドルのセンイル広告を出したことのあるファンダム(ファンたちのコミュニティ)のメンバーは「今年は韓国と日本でセンイル広告を出した。たくさんの人に認識してもらえたら、推しのブランド力が上がる」と熱く語る。 ■数値では測れない「愛」がある 2018年から応援広告のサービス・センイルJAPANを手がける増田雅人代表は「きっかけは、日本でも韓国のようなセンイル広告を出したいという知り合いからの相談だった」と語る。徐々にSNSなどで口コミが広がり、応援広告の出稿依頼が増えていったという。
ほどなくしてコロナ禍に突入し、韓国の男性アイドルグループ、BTSの「Dynamite」が大ヒットを記録するなどK-POPブームは過熱したが、世界中のアーティストが活動休止に追い込まれてしまった。 2021年から応援広告を出し始めた冒頭のファンダムのメンバーは「コロナ禍で、いつ推しと会えるかわからない。誰もが不安の中、ちゃんと愛していると伝えたかった。アルバムやグッズを買うといった、数値では測れない愛がある」と言い切る。SNSで応援広告の出稿を呼びかけると、多くのファンが賛同して集まったという。