【徹底取材】"仲介者"の存在も… 自衛隊の"高機動車"がロシア軍に流出!? 疑惑の経路の先で見えたものは…【#みんなのギモン】
日テレNEWS NNN
SNSに投稿された、ウクライナに侵攻したロシア軍とみられる車両から射撃される様子を撮影した映像。ところが、映像の車両には陸上自衛隊の「高機動車」とよく似た特徴が。転売や輸出が禁止されている「高機動車」がなぜ…。流出の実態を独自調査しました。 ◇ 今月、SNSに投稿された動画。投稿者によると、ウクライナに侵攻したロシア軍の映像で、先月23日に撮影されたものだといいます。「V」のマークは、ロシア軍であることを示すものだといいます。 問題はその車両です。これが、陸上自衛隊が使っていた「高機動車」ではないかという疑惑が浮上しているのです。 高機動車は、優れた走行性能をほこり、人員や資材の運搬など陸上自衛隊で幅広く使用されている車両です。映像の車と比べてみると、たしかによく似ています。 去年のウクライナ侵攻以降、SNS上にたびたび投稿され、ことし3月、国会でも追及の声が上がりました。 国民民主党・斎藤アレックス議員 「今、ウクライナに侵略をしているロシア軍が、自衛隊の高機動車を使用している写真がネットに上がっていました」 防衛装備庁長官(当時) 「外観上の類似性は認められたものの、画像だけでは自衛隊で売り払いした車両と同一か否かは判断できませんでした」 老朽化した高機動車は、民間の解体業者に払い下げられ、購入した業者は細かく切断して鉄くずとして処分することが義務づけられていますが、切断されずにひそかに転売され、ロシア軍のウクライナ侵攻に使われている疑惑が浮上しているのです。 ◇ 輸出することが禁止されている自衛隊の車両が、なぜロシアに。 NNNモスクワ支局・東郷記者 「ロシアの中古車サイトを見てみます。けっこうたくさんあります。1台、2台、3台、4台、5台…」 ロシアの中古車サイトには、少なくとも9台販売されていました。 4年前、実際に高機動車とみられる車を購入しようと、下見に行った男性に話を聞くことができました。 ロシア人男性 「日本車が大好きで、この車を(ネットで)見つけたので下見に行きました」 その時に男性が撮影した映像をみせてもらいました。 日本から輸入された車が数多く並ぶ、ウラジオストク郊外の中古車販売所。そこに高機動車と特徴が似た車が2台並んでいました。 ロシア人男性 「すごい車だ、ずっと気になっていたんだ」 車内には、日本語で「高機動車」と書かれたステッカーが。断定はできませんが、高機動車に非常によく似た車がロシアで販売されていました。 ◇ ところが、取材を進めるなかで、流出したとみられる高機動車は国内にもあることがわかりました。 向かったのはサバイバルゲーム場。私たちは所有者の許可を得て、実際に高機動車に乗ったことがある元陸上自衛隊隊員と車両を確認しました。 日本テレビ・小野高弘記者 「こちらの車なんですけど…」 元陸上自衛隊員 「これは明らかに高機動車の特徴ですね。外観の特徴もそうですが、緑の色彩も自衛隊のものです。こちらにあるのが部隊番号です。元々所属していた部隊の名前が書いてあります。22普通科連隊ですね」 防衛省のホームページに掲載された高機動車にも、同じものが確認できます。さらに…。 元陸上自衛隊員 「このあたりに管制灯火と言いまして、夜間に行動する際に、敵対勢力に察知されないように、小さな豆電球がつくようになっています。こちらはけん引用のフックをかける場所ですね。ヘリコプター等で空輸する際にも、ここがけん引する場所になります。ドアの内側も特徴的ですね。こちらのレバーが、窓ガラスの開け閉めのものになっています。シンプルな作りになっています」 日本テレビ・小野高弘記者 「開いた、開いた」 戦闘で使うことを想定した、一般車両にはない装備の数々。さらに車内に入ると、決定的なものがありました。 日本テレビ・小野高弘記者 「あれ、書いてますよ。”高機動車用ほろ”って書いてますけど」 元陸上自衛隊員 「これは防衛省に納入された品であるということを示すマークですね。こちらの桜にWマークというのが官品を示しています」 流出していた高機動車。ボンネットを開けると、ある異変が。 元陸上自衛隊員 「あっ!フレームが切断されていますね」 解体業者に払い下げる際に、規定に従って切断したとみられる場所がありました。しかし…。 日本テレビ・小野高弘記者 「あ、かかった。エンジンかかりました」 フレームの一部が切断されていたものの、走行に必要な部分は手つかずのまま。問題なく走行できる状態でした。 ◇ さらに取材を進めると、ロシアでも、高機動車とみられる車を所有しているという男性から、実際に車を見せてもらえることに。 NNNモスクワ支局・東郷記者 「こちら見てみますと、管制灯のあとがここ、それからこれ、そしてここにもありますね。そしてその上にはフックもついています。非常に特徴が似ています」 車には、国内で見つかった高機動車と同じ管制灯火とよばれる特殊なライトのほか、けん引用のフックが取り付けられていました。 さらに、ドアには、レバーを上下し手動で開閉させる窓が。こちらも高機動車と全く同じものでした。「高機動車」の特徴と一致する車両について男性は…。 ―――これは日本の自衛隊の車ですか? 「なんとも言えません。知りません」 ―――この車はどこから来たんですか? 「ウラジオストクではない近い地域から…」 男性は、購入先や価格は覚えていないと話しました。鉄くずにされているはずの高機動車はどうやって流出したのでしょうか? 私たちは情報公開請求を行い、過去5年間で620台の高機動車を落札した、22の業者を特定。そのうちのひとつの業者から、自衛隊車両を解体する様子を写した写真を入手しました。本来、こうした写真を提出することになっていますが……。 落札業者 「解体・破砕処理が完了した時点で、作業過程を記録した写真などを提出することになっていたが、書類が揃っていなくても求められることはなく、適切に処理したかを確認されることもなかった。自衛隊は民間に売り払ったらそこまでという感じだった」 さらに、数年前に購入希望者から依頼され、解体業者から高機動車を購入し渡したという人物から話を聞くことができました。 売買を仲介した男性 「(当時、ヤードには)5~6台はありました。普通に、中古の車を売るような感じです。どれでも(好きなもの選んで)いいみたいな感じ」 ―――数年前までは簡単に入手できた? 「その当時は(購入するのは)簡単でした」 男性は、高機動車が解体処理されず転売されている実態を、「昨日今日始まったことではない」と話しました。 解体業者から転売されたとみられる高機動車。ロシアにはどのようにして持ち込まれているのでしょうか。業者の証言によると、バラバラに分解してロシアに持ち込まれたあと、組み立て直されたものとみられています。 解体業者が適切に処理したかを確認することなく、転売できてしまう状況が長らく放置されてきた実態。防衛省も調査を進めており、再発防止策を年内に公表するとしています。 (2023年11月17日放送「news every.」より)
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