「ニューロダイバーシティ」企業注目…発達障害ある人の特性を理解、多様な能力を積極的に生かす
発達障害や精神障害のある人の特性を理解し、活躍を促す取り組みが企業で注目されている。成長戦略としての意味合いが強く、背景には、多様な能力を積極的に生かそうという「ニューロダイバーシティ」と呼ばれる考え方がある。
高い集中力・想像力…独自の強み
プラント大手・日揮ホールディングス傘下の「日揮パラレルテクノロジーズ」(横浜市)は、グループ各社のIT関連業務を請け負うため、2021年に設立された。現在、主力となっているのは発達障害や精神障害を抱えるエンジニア32人と身体障害者の2人で、6人のマネジャーがサポートする。
手がける内容は多岐にわたる。例えば、グループが進める月面開発プロジェクトに関し、日揮パラレル社は月面のメタバース(仮想空間)作りをサポートしている。
ほかにも、過去のデータをもとにプラント設計を最適化するソフトや、社内情報を横断検索できる機能を提供するなど、従来は社外に発注するか手つかずだった仕事を次々と形にしており、依頼や問い合わせが急増しているという。
エンジニアが抱える症状は、人とのコミュニケーションが苦手だったり、感覚が過敏でオフィスの光を苦痛に感じたりと様々だ。一方で、集中力を維持したまま継続して物事に取り組んだり、高い創造力を発揮したりと、独自の強みを持つ人が多くいる。日揮パラレル社では、各自がそれぞれの特性に応じて働けるよう、様々な工夫をこらす。
採用時には、業務をベースにした課題を解いてもらって能力を見極めるとともに、自身の特性などを明確にしてもらう。
請け負うのは、重要でも緊急性の低い仕事に絞り、各人が自分のペースで働けるよう、チームではなく個人単位で割り当てる。
エンジニアには完全在宅勤務を認め、基本的に働き方は自由。あくまで仕事の成果を重視する。他方、進捗(しんちょく)状況や体調などは毎日報告してもらい、マネジャーが相談に乗ったり、アドバイスしたりする。
当面は毎年10人ぐらいのペースで雇用を増やす計画で、応募倍率は7倍に上るという。阿渡(あわたり)健太社長)は「働く環境が整いさえすれば、高い能力を発揮する人材は多い。外部からの仕事を増やすなど、さらに事業を広げていきたい」と話す。