“紀州のドン・ファン”元妻の「あのタイミングで死んだせいで」の怨み言に野崎氏の腹心が「いかにもあのコらしい」
一連のやり取りでポイントになったと思ったのは、事件発生当時の警察による事情聴取の際に、早貴被告が『覚醒剤を買ってきて欲しい』と社長から依頼されていたとは話していなかったことです。この点は裁判官や裁判員の早貴被告に対する心象にマイナスになったのではないかと思います。長年貸金業を営み裏世界にも人脈があったと思われる野崎氏が、和歌山の田辺に一切人脈がない早貴被告に『覚醒剤を買ってきて欲しい』と依頼したというのはにわかには信じられません」(司法担当記者) ■ 野崎氏への情を感じさせる言葉はついに口にせず 55歳も年の離れた資産家の高齢男性に、出会ったばかりで結婚を申し込まれ、それを受け入れたということからして、「遺産目当て」の結婚というのは当初からうすうす世の中も感じていたことだが、公判の中で早貴被告は、それを公然と口にするどころか、野崎氏に対して一切の愛情すらなかったかのような証言を繰り返した。 それは以下のやり取りにも現れている。 検察「覚醒剤を買うのを頼まれて、なぜ断らなかったんですか?」 早貴被告「私が使うわけじゃ無いし、おカネもらえればいいかと思って」 検察は、覚醒剤を注文した日に「覚醒剤 死亡」などと検索した、須藤被告のスマートフォンの履歴についても追及した。 検察「殺人事件などについて調べたのはいつ?」 早貴被告「高校生ぐらいからです」 被告は、不気味で不可思議な事件が好きと語り、一連の「完全犯罪」や「老人・死亡」などの検索履歴の理由もホラーが好きな自分の嗜好からだと力説している。
一方で、夫の死を目の当たりにした時にも「感情が動くことはなかった」と話した早貴被告の口からは最後まで「(亡くなって)悲しかった」とか「ご冥福をお祈りしたい」という言葉は出て来なかった。 この日も傍聴に駆けつけた、野崎氏が経営していた酒類販売業「アプリコ」の元従業員で会社の監査役でもあった番頭“マコやん”は次のように語る。 「あのコの普段の人間性がそのまま裁判で明らかになったという感じで特に驚きはありません。社長の死を悼む言葉もないばかりか、社長の怪死によって自分は殺人犯扱いされて迷惑したという言葉を聞いて、本当にあのコらしいなと思いました。“おカネは貰うけれど、それで何が悪い?”という考え方は社長と結婚した当初から、ある意味一貫していました。逮捕されてから3年間も拘置所に置かれていたけれど、そこは何も変わっていなかったんですね」 ■ 覚醒剤の購入は認めるも自殺や事故の可能性を主張 この裁判で、もっとも重要な要素の1つが、野崎氏の死因となった覚醒剤についてだ。11月8日から始まった被告人質問で、須藤被告は入手にいたる流れについて、性的機能が衰えた野崎さんから頼まれ、売人から覚醒剤を購入したと説明した。 だが早貴被告によれば、この覚醒剤はニセモノだったと後日、野崎氏から伝えられたという。そのため野崎氏が亡くなる原因となった覚醒剤は、別のルートで野崎氏が入手したものであろうとしている。 そして自身に向けられる野崎氏殺害の疑惑について、「(野崎氏が)『死にたい、死にたい』と言ってた」「(野崎氏が)量を間違えちゃったということもある」と答え、野崎氏が覚醒剤を使っての自殺を図った可能性や、事故死の可能性を主張した。 一方で、検察側証人の多くが「自殺はあり得ない」「覚醒剤使用者を嫌っていた」と声を揃えて証言しているのはこれまでの記事でもお伝えしてきたとおりだ。