ドイツでコーチ修行、川崎ブレイブサンダースの前HC佐藤賢次の挑戦(前編)「まだまだ川崎を良くしていくためにやれることはある」
「ヘッドコーチが終わって、すぐにクラブを離れるのは違う気がしています」
――天皇杯を2度制覇など、指揮官として確固たる実績を残しました。慣れない海外でイチから出直すのは、いろいろと大変なチャレンジだと思います。もっとストレスを感じない環境を選ぶこともできたはずです。 そこは苦労したからこそ、得られるものがあるという考えがあります。今までを振り返った時も、やはりキツいシーズンこそ、どうすればいいのかもがいて考え続けて、いろいろな人を話しをしたりしました。その経験が自分を大きく成長させてくれると思っています。 ――佐藤さんがドイツで何を感じて、どんな知見を得るのか同業者で注目している人も多いと思います。 そうですね。「ドイツにいる間、行っていいですか?」とか、たくさん言われています。ありがたいことに注目してもらえていると感じていますが、ただ僕自身はイチから勉強をしに行くだけという意識です。だから、本当は誰にも言わずにこっそりと行きたかったです(笑)。「あの人は今どこにいるんだ?」みたいな方が良かったですが、そういう訳にもいかないのは理解しています。 ――新しいスタートを切る一方で、川崎に籍を残しての渡独です。そこは、佐藤さんにとって大きなこだわりがありますか。 先ほども言いましたが、同じ場所に居続けることの狭さは感じつつも、川崎に育ててもらって今の自分があります。この22年間の積み重ねが自分の土台です。川崎はプロになってまだ10年も経っていない、発展途上の段階です。そこでチームの成長に貢献したいとの思いがあります。ヘッドコーチ職を終えて、すぐにクラブを離れるのは違う気がしています。もっといろいろなモノを身につけて、自分がやれることを増やす。その上でここに戻ってきて経験を還元することがクラブの発展だけでなく、自分にもプラスになる。その思いをクラブに相談して、ありがたいことに籍を残したままでということになりました。 まだまだ、川崎を良くしていくために自分がやれることはある。それをやり切るまでは、このクラブに貢献していきたいです。自分の中でやれることがなくなった。これまでの経験を全部、形にできたと思ったら、その時に自分のやりたいことをやれたらいいと思っています。ただ、今は川崎の発展に貢献することが軸です。
鈴木栄一