「岸田の優柔不断」に帰して済ませるなかれ――自民党リベラルの衰退と日米一体化の加速
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岸田文雄政権の低迷が続いている。2021年秋の発足当初は 安倍晋三 元首相の庇護の下で動き出したが、その安倍氏が凶弾に倒れ、自民党内の力学は大きく変わった。ハト派・リベラルの宏池会を率いる岸田首相なら、日本政治を新たな局面に導くのではないかという期待もあったが、現実は違った。リベラルの理念は打ち出せず、側近の首相秘書官からは同性婚やLGBT(性的少数者)に対して「見るのも嫌だ」という差別発言が飛び出す。安全保障では、米国との一体化が加速し、防衛力を大幅に増強。その財源確保のための増税に突っ走る。経済の再生も進まない。岸田政権の現状は「自民党リベラル」の衰退を如実に示している。 まず、岸田首相の理念である。本人は「リベラル派」「ハト派」を自称してきたが、実態は違う。例えば、リベラル派が推進してきた選択的夫婦別姓問題。岸田氏は首相就任前、自民党内の選択的夫婦別姓を推進するグループに名を連ねるなど支持の姿勢を示してきた。しかし、首相就任後は「慎重に検討すべき課題」と語り、慎重姿勢に転じた。 LGBTに対して「生産性がない」と述べるなど差別的発言を続けてきた杉田水脈衆院議員を政務官(総務省)に起用したのも、岸田政権が初めてだ。安倍、菅義偉両政権でも杉田氏の政務官への起用は見送られてきたのに、岸田首相は、杉田氏が所属する自民党最大派閥・安倍派の要求に応じた格好だ。22年8月に政務官に就任した杉田氏は、国会で野党の追及を受け、12月には辞任に追い込まれた。
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星浩