50%を割った首都圏タワーマンションの契約率、もはやタワマンというだけで評価される時代ではなくなった!
■ 10年前は高い契約率を維持していたタワマンだが… 【グラフ1】の黄色の折れ線グラフを見ても分かるように、人気を集めた大型物件が発売された月には月間1000戸近くのタワマンが発売され、契約率が90%近くに達した月もあるが、その合間には50%割れの月が顔をのぞかせる。2023年10月には28.1%と3割を切ったこともあるほどだ。折れ線グラフの上下動の波が大きく、売れる、売れないがはっきりしている。 それに対して、まだタワマンの希少性が高かった2012年4月から2014年4月までの2年間のタワマンの発売戸数と契約率を調べた結果が【グラフ2】だ。 契約率を示す黄色の折れ線グラフが【グラフ1】とは明らかに異なっているのが一目瞭然だろう。やはり月による変動はあるものの、極端にブレるわけではなく、この2年間で一番契約率が低かった月でも59.5%と6割近い水準を維持している。2013年3月~2014年2月までは70%以上を確保し、90%前後の高い契約率の月も多かった。 特に、2012年4月~2014年4月までの2年間の超高層マンションは、マンション全体より高い契約率を維持しており人気が高かったが、2022年4月からの2年間は、むしろマンション全体より契約率が低い月も多くなり、大きく様変わりしている。 これはタワマンが急増して希少性が失われた結果、「タワマンだから」というだけで売れる時代ではなくなっていることを物語っている。 それだけに、発売時に人気を集め、完成後も高い評価を得て資産価値を維持していくためには、タワマンにプラスアルファの付加価値、その物件ならではの独自の魅力を持っていることが重要になってくる。
■ 資産価値も維持できる人気の高いタワマンに欠かせない「10の条件」 では、人気の高いタワマンの条件とは何か。ポイントを整理すると、(1)眺望の良さ(2)50階建て以上(3)共用施設(4)管理サービス(5)駅前・駅近(6)交通アクセス(7)商業施設・公共施設(8)地震対策(9)各種の防災対策(10)価格的な魅力――の10点を挙げることができる。 例えば、眺望の良さとしては、都心の夜景が見える東京タワーや東京スカイツリー、レインボーブリッジなどのランドマークが見えるといった特徴を持っていると同時に、それが当面は阻害されないことが大切だ。そのため、エリア内の最高層であったり、50階建て以上など、タワマンが増えた中でもまだまだ希少な「高さ」を持っていることが重要になってくる。 そのほか、大規模マンションが中心なので、共用施設や管理サービスが充実しているのは当然で、中でもホテル並みの豪華なエントランス、ゲストルーム、多言語対応のコンシェルジュサービスなどが設置されていることが望ましい。 また、立地面での特性も重要だ。マンションは立地が全てと言われるほどで、駅前再開発などによる建築が多いタワマンでは、駅近、駅直結などが大きなインセンティブになる。 最近の例では、2023年3月に発売されたJR山手線浜松町駅直結の「WORLD TOWER RESIDENCE(東京都港区/2025年3月下旬入居予定)」は、平均価格2億円台の超高額物件だったが、第1期販売の276戸が、平均15.3倍、最高152倍の人気を集めて即日完売した。 地震対策や防災対策も災害大国ニッポンでは重要だ。特に上層階ほど地震による揺れが大きく長くなるので、より強度な免震構造や制震構造が採用されている物件なら安心感が高まる。 また、液状化などの心配のない地盤の硬さにも注目しておきたい。例えば、2024年7月から発売が始まる「パークシティ中野(東京都中野区/2026年7月下旬入居予定)」は、免震装置、制震装置を組み込むと同時に、パンフレットなどで次のような点を強調している。 〈本物件は海抜40mの安定した武蔵野台地の中央部に位置し、地盤沈下や地震の揺れ、液状化や大規模な水害などの災害リスクが比較的小さいエリアといえます〉 通常は、地盤の硬い支持層まで基礎杭を打って、その上に基礎を載せるが、硬い地盤が地表近くにあれば、そこまで掘れば直接基礎を施工できる。そのため、基礎杭が必要なくなり、地震で基礎杭が折れたり施工ミスが発生したりするリスクが少なくなる。 しかも、パークシティ中野はJR中野駅とペデストリアンデッキ(高架型の歩道)で直結するなど立地面での優位性もあり、発売されれば高い人気を集めるのではないだろうか。