「ムズい」「ハズい」は時代遅れ…若者言葉の恐るべき変化 盛衰激しく「謎い」も出現
飽きられるのも速い
新しい形容詞の中には、「ウザい」という市民権を得た言葉もあり中高年世代も頻繁に口にするのではないだろうか。 「『うざったい』を縮めた『ウザい』は語源が方言であり、その方言が時間をかけて広がって東京に流入し、全国へ広がった、という経緯があり長期的な言語変化と呼べます。新しい形容詞とは従来の形容詞とは異なり、既存のルールに従わない活用を行うものや、従来と同じ活用を行ったにもかかわらずその意味するものが異なるもの、あるいは形容詞の造語法が異なるものを私は“新しい形容詞”と呼んでいます。それらは主に若者によって使用される『若者言葉』だと考えられます。『ヤバい』が典型的な事例であるように若者が日本語の規則性から自由になり新たな意味と用法で使っているのが若者言葉といえるでしょう」 ただ、こうした若者言葉は飽きられるのも速い。実際に都内の男子大学生に聞いてみた。 「『ムズい』は私が小学生の頃から定着しましたが、最近はだんだん聞かなくなった印象です。『ハズい』はギリギリ同年代でもしゃべる人はいますね。『謎い』も周りの年齢が上がるとともに全く聞かなくなりました。若者言葉というよりかは、小中学生などあまり言葉遊びに恥じらいがない層が中心層である気がします」 大流行した「ナウい」も80年前後の最盛期を過ぎると急速に陳腐化し廃れていった。今時「ナウい」などと口にすればすぐさま“オッサン認定”である。 「新しい形容詞の特徴は(1)省略により生まれた語彙、(2)外来語を派生させた語彙、(3)語幹として使用できる語彙・品詞の許容範囲を拡大があり(※3)、中でも『謎い』は遊び要素が大きいかと思います。『謎かった』など活用ができるので面白いのでしょう。若者言葉は小中学生というよりは女子高生がいまだに流行の中心にいると考えています。具体的な使用頻度については属する社会集団内の許容度、個人の考え方などによって変わりますが、Xが現在の使用状況を如実に物語っています。今後もどんどん新造語が発生してくるのが日本語の変化の最先端だと言って良いと思います」 まさに≪謎だらけ≫の若者言葉。それも日本語が元気である証(あかし)なのかもしれない。 〔出典〕 (※1)井上史雄(1998年)『日本語ウォ ッチング』岩波新書 (※2)米川明彦(1998年)『現代若者ことば考』丸善ライプラリー (※3)堀尾佳以(2007)「新しい形容詞」『比較社会文化研究』九州大学大学院比較社会文化研究科 デイリー新潮編集部
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