クルマが「ドライバーのクセを学習する」という噂はウソ! ECUの真実とは?
ECUは用意されたプログラムを再現するだけ
AIが話題となっているが、クルマのECUに学習機能があり、ある一定の時間を経るとドライバーの運転パターン、クセを覚え込んで運転操作に反映させる、というまことしやかな話を耳にすることがある。要は、コンピュータがドライバーの運転パターンを学習し、その後はコンピュータがドライバーの運転パターンを再現する、ということだ。 【写真】なんの意味かご存知? パッと見よくわからない謎デザインの警告灯たち(全5枚) が、ちょっと待て、である。コンピュータがドライバーの運転操作、パターンを学習し、ドライバーに代わってクルマの運転操作をするというのはおかしくないか、ということである。たとえば、アクセルペダルの踏み込み加減、踏み込みスピードは、ドライバーがどれだけの加速力を必要としているかを表すもので、ふだんおだやかな操作のドライバーが、急加速を必要としてアクセルペダルを踏み込んでも、ECUが学習機能によって緩慢なスロットル開度にしかならない、という可能性も十分考えられる。 一般にいわれるECUの学習機能とは、あらかじめコンピュータのなかにいくつかの走行パターンが設けられ、運転状況(ドライバーの各種操作、走行速度など)に応じて最適と判断された運転プログラムが適用されることを指す。もちろん、インプットプログラムであるため、何らかの方向性はもたされることになるが、現在重要視される問題は、燃費性能や環境性能(排ガス規制対策)で、ドライバーの運転操作から走行環境を判断し、それに一番適したプログラムが選ばれ用いられる、というものである。 現段階で見るならば、ECUにいちばん求められるものは、ドライバーの運転操作に対してクルマ側が自動的に対応する能力で、たとえばその都度変化するドライバーの運転操作に応じ、ドライバーが何を求めているのかを正確に判断し、瞬時に最適な対応(アクセル操作に関していうならば、スロットル開度に応じた最適空燃比の選択)をすることなどだろう。 ECUの学習機能とは、ドライバーの運転パターンやクセを覚えてドライバーに代わる操作をすることではなく、ドライバーの運転操作からどんな走行環境であるかを判断し、それに対していくつか備えたプログラムのなかから、最適なものを選んで運転状況にフィードバックする機能、と考えるのが正解である。 自動運転の時代を目前に控え、ECUに課せられた役割は無数に存在する。ECUには、「ドライバー不介在」の状態で、いかに目的地まで安全、確実にクルマを走らせることができるか、という制御能力が最重要課題となっている。
大内明彦