都営地下鉄大江戸線「光が丘の先」延伸計画は進んでいるのか 整備の「優先度上位路線」だが動きが見えない
都によると、プロジェクトチームでは「将来の旅客需要や収支採算性に関する調査・検討を進めている」といい、課題となっているのは採算性だ。累積損益の40年以内の黒字化が採算性の目安となるが、練馬区大江戸線延伸推進課の担当者によると、現状では「やや難しいところがある」という。 「進めるべき」とお墨付きを得た区間の採算性に影響を及ぼしているのは、物価上昇による建設費の高騰とコロナ禍による人の流れの変化だ。
■物価上昇とコロナ禍が影響 2016年の答申の際の分析結果では、光が丘―大泉学園町間の事業費は約900億円。黒字転換は19年目、1を超えると事業の効果があるとされる費用便益比(B/C)は2.0~2.1だった。 だが、都の試算による現状での概算事業費は約1500億円で、約1.65倍に膨らんだ計算だ。旅客需要については、延伸によって大江戸線全体で1日当たり5万人の増加が見込まれているが、コロナ禍を経て通勤需要が以前のレベルに戻らない中、新たな需要の確保が重要になっているという。
このため「旅客需要の創出」「コストの低減」「財源の確保・活用」についてさらなる検討が必要とされ、「それに向けて(都と区で)さまざまな協議を重ねている」と区の担当者は現状について説明する。 区は2011年度から「大江戸線延伸推進基金」の積み立てを開始。2024年度は30億円を積み増し、総額は80億円に達した。2025年度も同レベルの額を積み増せば100億円を上回る額となる。区の担当者は、「区が担うべき財政負担や鉄道施設整備への協力などが、事業化にあたって重要になってくるところだと考えている」と話す。
【写真の続き】営業運転では地上に出ることのない大江戸線車両、外に出るのはどんなとき? 通常は見られない専用の「電気機関車」も 以前から新路線の「有力候補」でありながらも、物価高騰やコロナ禍といった社会情勢の変化が影を落としている形の大江戸線延伸。構想としては後発の南北線品川延伸や都心と臨海部を結ぶ地下鉄構想など、都が力を入れる地域の新線計画が注目を集める中、「足踏み」感はぬぐえない。 だが、道路や駅予定地などの整備は進んでおり、新線計画の中では比較的環境が整っている路線だ。都によると、検討結果をまとめる時期は未定。収支採算性という課題をいかにクリアするかが、今後の進展の鍵といえる。「早期延伸実現」を訴える看板の立つ駅予定地が、実際の駅になる日はいつか。
小佐野 景寿 :東洋経済 記者