「表現の不自由展・その後」再開 なお残る乗り越えるべき論点
国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」は会期が残り1週間を切り、焦点だった「表現の不自由展・その後」などの全展示が8日午後から再開されました。愛知県による検証委員会の設置をはじめとしたこれまでのさまざまな動きと10月5、6日の2日間にわたって開かれた「表現の自由」をめぐるフォーラム、そして参加作家らによる対応などから、あらためて状況や論点を整理してみましょう。
再開が「迫られた」事情
「不自由展」は8日午後から、警備強化や電話回線増強、事前予約制などを取り入れて再開されました。まだ強硬な反対論もある中で、「なぜそこまでして再開しようとするのか」と疑問を持つ人も少なくないでしょう。 展示内容として明らかな違法性はありません。まずは実際に作品を見て評価してほしいという点で関係者の思いは一致しています。ちなみに、今回の不自由展で最も物議をかもした作品の一つである、昭和天皇の肖像画をバーナーで焼いて足で踏みつけるといった場面を含む映像作品は、先月21日の通称「国内フォーラム」で20分間の全編が公開されました。県側によれば作者の大浦信行氏から公開の許可が得られたとのことで、フォーラムの様子を記録したネット動画の中でいつでも見ることができます。8月の開幕時はこの20分間の映像を通路の途中にあるモニターで見るために人が滞留したり、すべてを見切れない人が出たり、動画の一部が切り取られてSNSで拡散したりしました。今回、こうしたことによる不満や誤解は多少、なくなるのではないかと思われます。 もう一つの再開の意義は、主に「検閲があった」と抗議やボイコットをしていた海外の作家たちが、再び元の状態で展示を始めることです。 この海外作家たちの動きに対しては、検証委でも「今後の国内の芸術祭、国公立美術館への海外作家の出品拒否を誘発しかねないリスク」だと指摘されていました。愛知県に限らず、日本の美術界全体として危機感が共有され、再開が迫られたと言えるでしょう。