被災地で進む「緑の防潮堤」 津波を抑えることはできるのか?生育と防災効果を探る #これから私は
南相馬市の「緑の防潮堤」(撮影:松原誠)
東日本大震災の後、被災地の沿岸部ではコンクリートの堤防ばかりでなく、「森」や「緑」を取り入れた防潮堤づくりも始まった。人間以上に長い年月のかかる木々の成長は順調なのか、津波への防災効果はどれほどあるのか。被災3県で最大規模といわれる宮城県岩沼市と福島県南相馬市の現場から探った。(取材・文:ジャーナリスト・関口威人、ドローン撮影:松原誠/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
津波で沿岸部が壊滅的被害
宮城県南東部の岩沼市。東日本大震災の津波で市域の約48%が浸水し、187人の死者・行方不明者が出た。震災後、市は内陸への集団移転をいち早く決断。かつて田畑や住宅が広がっていた海岸部一帯には、高さ10メートルほどの丘14基と「緑の堤防」を備えた公園(千年希望の丘)を造ることを決めた。
千年希望の丘は、海岸の南北約10キロに及ぶ。もし、また津波が押し寄せれば、市民は丘の上に避難し、緑の堤防が津波を受け止めることになる。 植えられている木はタブノキ、シイ、カシなどの常緑広葉樹を主体に約20種。大小の葉は日光を浴びてピカピカと輝いて見えるため、照葉樹とも呼ばれる。
35万本の苗が植えられた「緑の堤防」
希望の丘で植樹がスタートしたのは2013年6月。これまでに約35万本の苗が人の手で植えられた。植樹の時期が違うため、まだ腰より下の幼木ばかりの場所もあれば、人の背丈を超える高木がこんもりと育つ場所もある。 「これから10年、20年経てば立派な森に成長して『緑の堤防』は完成するでしょう。海側にはコンクリートの堤防もありますが、いずれは劣化します。一方で、木は時間が経つほどにしっかりと深く根を張り、津波が来ても勢いを低減させる。10年前の震災では引き潮で多くの人や家屋が海に流されましたが、森の木々は引き潮で流されたものも受け止めて、多くの命を救うと言われています」 こう説明するのは千年希望の丘交流センターの百井弘館長。希望の丘は市営公園のため、市の建設部が中心となって管理している。