「魔法のiらんど」の今ーー「ホムペ」廃止後も月間3億PVの理由
1999年、iモードのサービス開始とともに生まれたコミュニティーサイト「魔法のiらんど」。フィーチャーフォン(ガラケー)での操作性に特化したサービスで、PCを使用せずに自分のホームページを作成できる「ホムペ」機能などが人気となり、10代の男女を中心に親しまれていた。 また、サイト内で執筆されていた小説は「ケータイ小説」の走りとなり、2006年に書籍化された美嘉の『恋空』は、女子高生の妊娠、流産などセンシティブな事柄を扱いながらも、翌年には新垣結衣・三浦春馬主演で実写映画化され、大きな話題を呼んだ。 だが、2010年代にはiPhoneの普及をきっかけに“スマホシフト”が起こるとともに、TwitterやフェイスブックなどのSNSが主流になった。気づけば、魔法のiらんどが話題にのぼることも少なくなってきた。 ところが昨年に「魔法のiらんど、ホムペ機能などを終了。小説投稿サイトとして特化」というニュースが飛び込んできた。一時はメインとなっていた「ホムペ」などの機能をすべて終了、それまで「ブック」と呼ばれていた小説投稿の役割のみを残し、大きなリニューアルを果たしたのだ。それでも現在は月間3億PV、10~20代女性を中心に根強い支持を誇っている。 魔法のiらんどはスマホシフトの2010年代をどのように過ごし、小説投稿サイトへのリニューアルという大きな転換に至ったのか。担当者の岩田祐一氏に話を聞いた。(取材・文:鈴木梢/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
代名詞だった「ホムペ」をやめた背景
――魔法のiらんどが「ホムペ」機能を閉じる、というのは大きな話題となりました。 反響は大きかったですね。今でも「ホムペ機能は復活されないんですか?」といったようなお問い合わせをいただくことは多いです。マヂカルラブリーの野田クリスタルさんにも魔法のiらんど内で書かれていた日記を書籍化していただいたり。あれはホムペ機能の終了時期に合わせてではなく、たまたまタイミングが重なっただけなんですが。 野田さん以外にも、多くの芸人さん、ミュージシャンの方々に利用していただいていたようです。たとえばマキシマム ザ ホルモンさんは現在も、公式サイトが魔法のiらんど風のデザインになっているようです。『恋空』もいまだに根強い支持をいただいており、12月には新装版も発刊されます。 ――コミュニティーサイトから小説投稿サイトへの転換はあまりにも大きな舵の切り方だと思うのですが、どんな経緯があったのでしょうか? まず「魔法のiらんど」が2011年に旧アスキー・メディアワークスに吸収合併となり、2013年にはKADOKAWAに吸収合併され、今後はやはり同社の強みである「自社IP(オリジナルコンテンツ)を作っていくこと」が重視されることになりました。 もともと魔法のiらんどを作ってきた我々としては、従来のサイトを維持しながら小説などのコンテンツも広げていきたい気持ちが大きかったのですが、なかなか両立は難しく、2020年に大きくリニューアルすることになりました。ホムペ機能も利用者数を見たときに、役割を終えたこともわかっていました。