【社説】2025年問題 社会保障の改革に道筋を
福岡県朝倉市の高齢者施設「さわやかいずみ館」で、インドネシア人の女性2人が介護職として働く。入居する女性に顔を寄せ、流ちょうな日本語で優しく声をかけるエレンさん(31)は施設に欠かせない人材だ。 2年半前に来日してから、まだ一度も帰国していない。「1カ月ぐらい休みがあればいいけど、勤務シフト上は難しい」と話す。6歳の子どもは母国で両親が世話をしている。 政府の外国人介護人材受け入れ策として入国し、就労は通算5年に限られる。介護福祉士の資格を取れば延長が認められる。エレンさんは入居者の笑顔にやりがいを感じつつも、日本で働き続けるかは思案中だ。 介護従事者の不足に、どの地域も頭を痛めている。介護だけではない。高齢化と少子化が急速に進むこの国で、年金や医療を含む社会保障をどのようにして持続させればよいか。難問が重みを増す年を迎えた。
■九州の支え手3割減
かねて「2025年問題」と呼ばれている。 第1次ベビーブームの団塊世代(1947~49年生まれ)の全員が75歳以上になる節目の年で、総人口のおよそ6人に1人が後期高齢者になる。 社会保障の給付費は大きく膨らむ。25年度の約140兆円から、65歳以上の人口がピークに達する40年度には約190兆円になる見込みだ。これを保険料や公費で賄う必要がある。 支え手である生産年齢人口(15~64歳)は減る一方だ。95年は総人口の7割程度を占めたが、22年は約6割にまで減っている。 この基調は当分変わらない。九州7県で、50年までの30年間に3割減るという推計もある。半減する自治体も少なくない。既に医療や福祉の人手不足が深刻な地域では、さらに厳しい状況になることが懸念される。 単身の高齢者や認知症になる人が増えるなど、課題は多様化している。人口減少や住民の結びつきが弱くなった影響で、かつてのような見守り支援ができない地域もある。 人手不足を改善する手だてを急ぎたい。介護職の処遇改善を着実に進めるとともに、貴重な担い手の外国人が働きやすい環境を整えるべきだ。 支援が必要な人に適切なサービスを届けるには、健康寿命を延ばし、元気に過ごせる高齢者を増やす取り組みも欠かせない。