「ああ、ADHDでも意外と頑張れるじゃん?」4s4ki(アサキ)が疾患を告白して証明したかったこと《より良くなるために「楽しく戦おう!」》
誰かと一緒に曲を作ることが好き
――現在のADHDとクリエイティヴの相互関係はどんな状況ですか? 4s4ki 集中力のむらみたいなものは相変わらずあって。それが良くも悪くも何らか影響しているとは感じています。私は特に好きなミュージシャンという存在がいなくて、アニメ「コードギアス」シリーズが大好きで、光栄なことにインスパイアド・アルバムも作らせてもらったんですが、自分のルーツを意図してアウトプットするような感覚も全く無くて。楽曲も弾き語りがあれば完全に電子音楽というパターンもあるし、BPM(曲の速度)もさまざまで、いろんな振り幅の曲を作っていますし。 ただ、誰かと一緒に曲を作ることは、案外すごく好きなんです。私は幼い頃から、自分が見える赤色と誰かの目に映る赤色は、必ず同じしも赤色じゃないと思っていて。もしかしたら、私から見て青色でも、誰かにとっては赤色なんじゃないかな? と思うときもあって。 自分のセンスは信じているけど、ほかの人の目に何がどう映っているのか、とても興味があるんです。トラックメーカーと一緒に曲作るときも、本当に大枠のリクエストしか伝えないし、アー写(アーティスト写真)のクリエイティヴも、「マジカル阿修羅でお願いします」とか「マイティ・ソーでお願いします」といったイメージだけを伝えて、誰かのその人なりの解釈を知ることがとても楽しくて。 タイアップなんかでお題がはっきりしているものは全然作れるんですが、私はマーケティング的に「この層を狙おう」といった考え方では曲が書けないし、4s4kiとしての本質的な楽曲作りはそこにはない。だからとにかくマーケティングの諸々は全てスタッフさんを信じてお任せしています。
ハンデがあっても、その人だからこそ出来ることが絶対ある
――4s4kiさんのライブを観に行きましたが、音楽性はもとより、4s4kiの人間性やステージでの姿に共感しているファンも多いように感じられました。 4s4ki 私は自分のリスナーが、ファンのみんながすごく大事だし大好きだし、スタッフもすごく大好きなんです。それなのに、今年の春、ライブを飛ばし、活動を休止してしまったことで、いろんな人を悲しませたり傷付けてしまったことがすごく嫌だった。 変な言い方ですが、やらかしちゃった経験から、自分の悪い衝動を理解できるようになりました。いろんな人に迷惑をかけて申し訳なかったけど、気付かせてもらってありがとうございましたという気持ちです。 私の頑張っている姿をいろんな人に見てもらって、「ああ、ADHDでも意外と頑張れるじゃん?」みたく感じてほしい。ハンデがあっても、その人だからこそ出来ることが絶対あると思う。「ADHDだって、悪いことばかりじゃないんだ」といういまの私自身の思いを、私の姿と音楽で証明していきたいし、そうすることで、私自身もそう信じていきたい。 ――他人事な言い方に聞こえたら申し訳ないのですが、4s4kiさんには音楽があって本当によかったですね。 4s4ki 本当にそう思います……ああ、何だか涙出てきた……いろんな人やいろんなケースがあるので一概には言えないけど、私は正しい診断を受けられて本当に良かったと思っているし、いまの時代、診断を受けることを、あまり“怖い”と思わないほうが、たぶんその人自身も結果的に楽になれるんじゃないかと思っています。 私自身、まだまだ戦いの最中ですが、もしこんな4s4kiに共感してくれる人がいたら、これからも音楽を通して、みんなでより良くなるために「楽しく戦おう!」とメッセージを伝えていきたいと思います。 撮影 深野未季/文藝春秋
内田 正樹
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