ナブラチロワ氏がセリーナの態度を批判するなど広がる主審の判断是非論争
大坂なおみ(20、日清食品)が日本人初のグランドスラム優勝を果たした全米オープンの決勝戦で“女王”セリーナ・ウィリアムズ(36、米国)がカルロス・ラモス主審と繰り広げた“バトル”の波紋が収まらない。全米オープンの主催者は、ウィリアムズが犯したコーチの助言、ラケット破壊、主審への暴言という3つの罰則に対して1万7000ドル(約189万円)の罰金を科し、ウィリアムズが「コーチから助言を受けるなどの不正はしていない。女性差別だ」と抗議していることに対して、国際テニス連盟(ITF)は、ラモス氏の下した判定について「適切なルールに沿っていた」という異例の声明を発表した。 これらの公式の反応を受けて海外メディアも、それぞれの見解を報じた。 USAトゥデイ紙は、このITFの声明に関しての見解を記事にした。 「なぜITFはラモス主審の判定を擁護したのか。それは彼がルールに従ったからだ。ウィリアムズが、その歴史的なキャリアを歩む中で、女性差別や人種差別に耐えてきたことに疑いはなく、性差別はテニス界に存在し続けている。だが、その偏見が土曜の試合にあったという意味ではない」と、セリーナの「男女差別だ」の抗議に疑問を呈した。 その理由としては、ラモス氏の主審としての過去の経歴、軌跡にあるという。 同紙は、ラモス氏が過去に男性プレーヤーにも警告を与えている事例を紹介。 「2016年のリオ五輪でラモス氏はアンディ・マリーが、同氏に『まぬけ』と叫んだと思い警告を与えた。マリーは、その後、『まぬけな判定』と言ったのであり、『まぬけな主審』と言ったわけではないと説明した。2017年の全仏オープン4回戦では、ラファエル・ナダルが、時間をかけ過ぎたためにラモス氏は警告を与え、ファーストサーブの機会を奪った。ナダルはその後、ラモス氏に『もう2度と主審はやらせない』と怒りをぶつけた。7月のウィンブルドンでは、ラモス氏は、ラケットを地面に投げたノバク・ジョコビッチにスポーツマンシップに欠けるとして警告を与えた」と羅列した。 また記事は「この論争がどのように始まったのか忘れないでほしい」と、1回目の警告となったウィリアムズのコーチのムラトグルー氏からの指示に目を向け、「ITFの情報によると、コーチの指導に対する警告は珍しいことではない。全米オープンまでの3度のグランドスラムで(女子に対して)出た31回の違反のうち、11回がコーチングによるもので、これは他の違反よりも多い」と指摘した。ムラトグルー・コーチは「他のコーチもみんな同じことをしている」と、反論していたが、同じことをしているコーチは、やはり警告を受けているようなのだ。 また「全仏オープン、ウィンブルドン、全豪オープンのグランドスラム3大会で男子は59回の違反警告を受けており、これは女子のほぼ倍にあたる。男子選手は、コーチング違反で警告を受けたのは9回で、最も多いのがラケットや用具を粗末に扱った行為による警告で19回となる」とも紹介。「男性プレーヤーが同じことをしても注意されない」というウィリアムズの抗議が必ずしもそうではないことを明らかにした。 その上で記事は「全米オープンでもっとも深刻な扱いを受けたのは、ラモス氏の人格だった」と指摘。「女子選手は、プロテニス界からより良い扱いを受けるべきだが、ラモス氏もまたウィリアムズからよりふさわしい対応をされるべきだった」と締めくくった。 さらにウィリアムズの態度を批判する声も出てきた。 英国のデイリーメール紙は「マルチナ・ナブラチロワ氏が、ITFが『プロフェッショナリズムと誠実さ』を持って判定を下した審判を擁護し、ウィリアムズの態度を批判」との見出しを取って、18度のグランドスラム優勝を誇る女子テニス界のレジェンド、ナブラチロワ氏が、ニューヨーク・タイムズ紙へ投書した内容を伝えた。