Hippo Campusが語る、インディー・ロックの夢を受け継ぐバンドが歩んできた軌跡
最新作『Flood』までの歩み、バンドの深い絆
―CHAIとの北米ツアーは『LP3』のリリース後でしたよね。パンデミックを挟んで、長らく共同プロデューサーとして一緒に活動しているケイレブ・ブライトと共に作った、セルフ・プロデュース的な作品でした。なぜ外部からプロデューサーを呼ばずに『LP3』を作ったんですか? ジェイク:BJバートンがミネソタから離れて、スタジオが空いていた時、僕らにそこを貸してくれたんだ。両親が留守の間、子供たちが好き勝手に遊ぶみたいな感じでね。その時に「もしこんな感じでヒッポ・キャンパスのアルバムを作ったらどうだろう?って話になったんだ。それで『LP3』は自分たちの機材だけを使って制作したんだ、初めての体験だったよ。普通じゃ考えられないような実験をスタジオで繰り返して、狂気的な音楽を目指したんだ。 ネイサン:当時、ケイレブはジェイクと一緒にベイビー・ボーイズというプロジェクトを一緒にやっていたんだ。そもそもケイレブは僕らと同じ高校に通っていて、どんな形で一緒に仕事をするかずっと話し合っていたんだ。ケイレブのスタイルやプロダクションからはいつも刺激をもらっているよ。 ―前年リリースのEP『Good Dog, Bad Dream』と合わせて、エレクトロニカやハイパーポップからの影響を強く感じます。 ジェイク:『LP3』はパンデミックの前には曲が揃ってたんだけど、一年半くらい活動を止めてたんだよね。その後に、まずはEP『Good Dog, Bad Dream』を一週間で作って、そっちを先に出したんだ。本当にセルフ・プロデュースだったね。 ネイサン:自分たちだけでスタジオに入って、やりたいことが本当にできる空間を見つけたと思ったよ。ただ『Good Dog, Bad Dream』はアルバムを作るのと同じくらいのプレッシャーの中で作ったね。 ジェイク:あぁ、大変だったけど楽しかった。 ―そして最新作『Flood』が今年リリースされました。『LP3』から本作に至るまで、膨大なストックを捨てたり、新しいプロデューサーとしてブラッド・クックを招いたり、大きな変化があったとお聞きしました。 ジェイク:そうだね、簡単にはまとめられないけど……アルバムをいくつも作っては、それを壊すような作業だったね。 ネイサン:これまでのアルバムと比べても、『Flood』には10倍くらいの時間を費やしているよ。 ジェイク:思い返すだけでも圧倒されるね。ただ、『Flood』を通じて、バンドとしても個人としても誇りを持てるようになったんだ。それに、メンバーとの距離がすごく近くなった。今では同じ時間を共有できたことに感謝しているよ。多分、向こう10年ぐらいの間に『Flood』の成果が見えてくるんじゃないのかな。そういう意味では、今はバンドの転換期なのかもね。 ―『Flood』は心機一転してPsychic Hotlineからのリリースとなりました。個人的にも好きな作品の多いレーベルです。 ジェイク:シルヴァン・エッソ(注:Psychic Hotlineのファウンダー)とは、よく一緒にライブをしていたんだ。実はブッキング・エージェントが同じなんだよね。新しいマネージメントを探していた時もPsychic Hotlineとは相談をしていたんだよね。そして『Flood』が完成したときに手を挙げてくれて、本格的にリリースすることになったんだ。彼らは常にフレッシュなアーティストのフレッシュな音楽を世に送り出しているし、ヒッポ・キャンパスの進みたい方向に後押ししてくれるんだ。 ―ここまでヒッポ・キャンパスの活動に関わってきたプロデューサーやミュージシャンについて聞いてきましたが、最後はメンバーに関する話を聞かせてください。高校の同級生で集まった4人は、お互いにとって現在どのような関係なのでしょうか? ジェイク:最初は友達だったけど、今は家族だよ。メンバーのいない生活なんて考えられないね。個人的に、家族であるためには、友人関係よりも多くのメンテナンスが必要だと思うんだよね。でも、僕らはこの10年間でお互いの変化を見続けてきた。多くの刺激と信頼をバンドの中で交換してきた。安っぽい言い方かもしれないけど、時が経つにつれてより深い愛情が形成されていくのがわかるんだ。 ネイサン:僕らはバンドの初期の段階から、自分たちにとっての神聖な空間を守ることに心血を注いでいた。それはつまり、ザックのお父さんが持っていたあの地下室なんだ。僕らはこれからも、お互いの生活を尊重しながら、家族のようなバンドを続けるために活動をしていくつもりだよ。
Ikkei Kazama