お金ではなく「サービスを配る」がなぜいいのか お金持ちにもサービス給付で格差がうまる理由
貧しいAさん、ふつうのBさん、お金持ちのCさん、それぞれに定率で税をかけ、等しくサービスを提供してみます。すると最終的に、AさんとCさんの所得格差が小さくなっていることがわかります。 確認したいのは、「お金持ちが税を払い、貧しい人が受益者になる」だけじゃなく、「みなが負担者になり、みなが受益者になる」ことでも所得格差は小さくできるんだ、ということです。 え? どうして? いえいえ。これは当たり前のことなんです。
年収100万円の人が100万円分のサービスを受け取れば100%の所得増になります。でも、年収1億円の人が同じサービスを受け取っても、1%の増加にしかなりませんよね。人間を等しく扱うと、所得の改善効果は貧しい人のほうに大きく出るのです。 では貧しい人にも税をかける、この点はどうでしょうか? 図をもう一度見てください。Aさんは、払った税金よりも多くの受益がありますよね。ここがポイントです。 税率は同じでも、そもそも所得や消費の額が違えば、税の負担額は変わってきます。
お金持ちは収入が多いのでベンツや土地を買います。貧しい人は少ない税、お金持ちはたくさんの税を払うけど、受益は同じ。格差が小さくなるのも当然です。 私たちは、税の負担だけで、貧しい人たちの痛みを考えがちです。ですが、もらうほうもセットで考えないと、本当の痛みはわからないのです。 貧しい僕と超リッチなみなさんがどちらも1000円払うとします。お金持ちと僕が同じ負担? そう思いますよね。 でも、もし僕が二人の払った2000円を全部もらえるとしたらどうでしょう。僕が得をしているのは、子どもにだってわかる話です。
サービスを受け取る喜びと税の痛み。この両者のバランスを考えなければ、社会全体の公正さなんて語れっこないのです。 ■国際的にはオーソドックスな考え方 以上の考え方は、国際的にはオーソドックスなものなんです。僕の知人でアメリカのノースウェスタン大学で教えているモニカ・プラサドさんは、ニューヨーク・タイムズで次のように言いました。 「貧困と不平などの削減にもっとも成功した国々は、富裕層に課税し、貧困層に与えることでそれをやりとげたのではない」