なぜ浜松市は行政区を再編する必要があった? 前市長が語る「時代錯誤な地方自治法」
かつて1314億円もの負債を抱えていた浜松市は、いかにして市債を削減し、将来負担率の黒字化を達成したのか。前浜松市市長で、現在は静岡県知事を務める鈴木康友氏が行った「行革の舞台裏」について、書籍『市長は社長だ』より紹介する。 【図表】浜松市の財政の健全性は? 政令指定都市での比較 ※本稿は、鈴木康友『市長は社長だ』(PHP研究所)から一部を抜粋・編集したものです。
将来負担比率が「マイナス42.2%」に...
市債の削減とともに財政指標も大きく改善しました。注目すべき財政指標に、将来負担比率という指標があります。これは夕張市が破綻した事件を受け、総務省が毎年自治体に開示を義務付けたものです。 夕張市の破綻原因は、外郭団体への多額の債務保証であったことから、将来負担比率は、公債に加え、外郭団体などへの債務保証などすべての財政リスクを明らかにするものです。 計算方式は複雑ですので省略しますが、簡単に言えば、公債などの自治体の直接的な負債に、外郭団体への債務保証の額を加え、そこから充当可能財源という自治体が使えるお金を引いた額を、自治体の財政規模で割って、100を掛けた数字になります。 したがってこの値が大きければ大きいほど、将来の財政リスクが高いということになります。総務省の基準では、400%を超えると危険水域とされています。つまり、すべての負債が自治体の財政規模の4倍以上になると危ないということです。 結論から言えば、浜松市の将来負担比率は、2014年度にマイナスに転じ、直近の2021年度の数値は「マイナス42.2%」です。マイナスは黒字を意味します。マイナス42.2%は、額に直すと850億円の黒字ということになります。 2019年度に岡山市がマイナスに転じるまで、マイナスは浜松市のみでした。むろんマイナス42.2%は、政令指定都市のなかでは、圧倒的に健全な数値です。 この状態をさらに向上させていけば、浜松市は、少々の不測の事態が生じても大丈夫です。たとえば今後、南海トラフの巨大地震が発生することが確実視されていますが、こうした大規模災害にも、財政面から迅速な対応ができます。健全財政は常に維持しなければなりません。 私は国の財政状況に大きな危機感を抱いています。一刻も早く健全財政を実現しなければなりません。そうしなければ手遅れになり、将来に大きな禍根を残すことになります。自分自身の市政運営の経験から、やる気さえあれば、必ずできると確信しています。 改革の途上では大きな痛みも伴いますが、今の状況を招いてしまった私たちが、それを受けるしかありません。志の高い国会議員の皆さんの奮起を期待します。