なぜ浜松市は行政区を再編する必要があった? 前市長が語る「時代錯誤な地方自治法」
区役所を廃止しても建物やサービスはなくならない
総務省への働きかけと併せて、浜松市では行革審の答申に基づき、2011年から行政区の再編に着手しました。しかし道のりは多難でした。行政区再編には、賛成ばかりではなく、反対も根強かったからです。 反対の理由はいろいろ挙げられましたが、本音のところは、旧市町村の枠組みを区割りに残したため、再編によってその枠組みが崩されることへの心理的な反対が大きかったと思います。もう一つは区域が変わると、地方議員選挙の選挙区が変わるので、変わることによって選挙が不利になると思われる議員の反対もありました。 表向きの反対の錦の御旗は、「区役所が減ると市民サービスが低下する」というものでした。2019年には、統一地方選挙と一緒に、行政区再編に関する住民投票を実施しました。結果は、賛成が反対を若干上回りましたが、ほぼ拮抗状態でした。そのときも反対派は「市民サービスが低下する」というネガティブキャンペーンを徹底的に行いました。 再編で区役所を廃止しても、建物もサービスもなくなるわけではありません。廃止される区役所は、条例設置の「行政センター」として残し、窓口サービスなどの市民サービスもすべて継続する方針ですので、市民サービスが低下することはありません。私たちは、このことを懸命に訴えましたが、「区役所がなくなる」というキャンペーンのほうが強烈でした。
鈴木康友(静岡県知事)