なぜ浜松市は行政区を再編する必要があった? 前市長が語る「時代錯誤な地方自治法」
「行政区の再編」時代錯誤的な地方自治法の規定
行政区というのは、政令指定都市特有の制度です。昭和31(1956)年に政令指定都市制度ができたときに、地方自治法が改正され、区に関する規定が盛り込まれました。 具体的には地方自治法二五二条に、「指定都市は市長の権限に属する事務を分掌させるため、条例で、その区域を分けて区を設け、区の事務所(いわゆる区役所)を置くものとする」と規定されています。 そして第二項には、「区の事務所又はその出張所の位置、名称及び所管区域は、条例でこれを定めなければならない」と規定されています。 要するに法律で定められているのは、区制を敷くことと区役所を設置するということだけで、一区当たりの人口基準だとか、区役所の所管する事務など、具体的な内容はすべて条例で決めるということになっています。したがって政令指定都市といっても、区の数もバラバラですし、区役所の権限や事務内容もまちまちです。 同じ静岡県内の政令指定都市を比べても、静岡市は清水市との二市合併で政令指定都市になった市なので、旧静岡市を旧清水市のサイズに合わせて2つに分割し、三区としました。
区役所の新設と職員の分散に強烈な違和感
毎年5月に行われる浜松まつりでは、各町同士での凧合戦が繰り広げられる 一方の浜松市は、12市町村という多くの自治体が合併して政令指定都市になったので、合併時のさまざまないきさつによって、7区になりました。その結果、旧浜松市の区域は4つに分割され、新しい区役所を3つも新設しました。 合併以前は、人口60万人の浜松市を、1つの市役所とサービスセンターなどの出先機関で運営していて、何の問題もなかったのですが、7区にしたばかりに、区役所の新設と職員の分散が起こりました。当時私はこの出来事に、強烈な違和感を抱いたことを覚えています。実に無駄だと感じました。 政令指定都市制度ができた昭和31年から65年以上が経過し、政令指定都市の数が増え、それぞれ規模も違えば、特性も異なるようになりました。 そこで私は総務省に対し、地方自治法を改正し、「区域を分けて区を設け、区の事務所を置くものとする」という規定を、「区域を分けて区を設け、区の事務所を置くことができる」というように、「できる規定」に変更することを提言しました。 「できる規定」になれば、区は必要ないという政令指定都市は、区制を採用する必要がなくなります。しかし、いまだ改正の動きはありません。