「二つ目昇進の直前に2回目の余命宣告」三遊亭あら馬 人生を一度は諦めたものの肝臓移植を決意 提供した弟は「いいよ、娘の運動会があるけどね(笑)」
でも、実際、体調的にはそこまで悪くはなく、12月には痛みもほぼ消えていました。15分×2回という短い時間でしたが、管を一時的にはずして無事に高座に上がれたんです。落語のできはさておき、とにかくその場に立てたことが嬉しかったですね。 ── そのときの心境をお聞かせください。 あら馬さん:まず、小遊三師匠への「キャンセル料を払わなくて済んだ」という安堵感がありました(笑)。そして何より「生きたな」という実感が強かったです。この高座に立つために手術したので大きな達成感がありました。
私は遠い未来を見据えるタイプではなく、毎日、目の前の目標に向かって生きるタイプなんです。だから、この12月の高座に立てたことで「これで死んでもいい」と思えるほどの充実感がありました。 ── 周囲の反応はいかがでしたか? あら馬さん:多くの方が涙を流してくださいました。母の知り合いや私の同級生などが集まって、まるで同窓会のような雰囲気でしたね。 だけど、みんな私のせこけた姿に驚いていました。末期患者、体重が59キロから43キロまで落ちていたんです。「術後2か月で高座に立つ人なんていない」と驚かれました。鹿児島弁で「ぼっけもん」(冒険者、無鉄砲な人)と呼ばれ、「やっぱり、この子に何を言っても無駄だ」と思ったでしょうね(笑)。
今では、逆に当時のことを知らない人は信じてくれないんです。「肝臓移植って嘘でしょ?」と言われて、打ち上げでは普通にお酒を注がれるようになりました。もうそろそろ病気の話もおしまいかもしれませんね。 ── 現在のお体の状態はいかがですか。 あら馬さん:肝機能自体は問題ありません。ただ、免疫抑制剤を12時間おきに服用する必要があり、他の健康上の課題はありますね。皮膚科や婦人科にも通院中で子宮筋腫もあるんですが、過去の手術の影響で体内が癒着しているため、新たな手術すると人工肛門になる可能性が高くて、手術不可能と言われています。