「二つ目昇進の直前に2回目の余命宣告」三遊亭あら馬 人生を一度は諦めたものの肝臓移植を決意 提供した弟は「いいよ、娘の運動会があるけどね(笑)」
ただ、私の体の状態が予想以上に悪く、医師からすると25%では全然たりなかったそうです。肝臓は1か月で100%の大きさに戻るんですが、その1か月間に耐えられるかどうかが問題でした。実際、拒絶反応も出て敗血症にもなり、ICUでは本当に厳しい闘いでした。 でも私には、12月に地元の鹿児島で小遊三師匠をお呼びして、二つ目のお披露目公演をするという目標があったんです。手術前に先生に「先に公演をしてから手術をするのか、それとも手術してから公演ができるのか」と聞いたら、先生が「12月には間に合いますよ」って言ってくれて。それで手術を決意し、術後のリハビリに全力を注ぎました。
── それはすごいです。 あら馬さん:体はまだつらいんですけど、人間は寝たきりでいるとよくないと聞いていたので、術後3日目には早くもスクワットしたり、東大病院のICUでエアロバイクをこいだり、筋トレをしたりしていましたね(笑)。「東大病院のICUで自分で歩いてシャワーを使う人なんて見たことない」と看護師さんたちは驚いて全員で私のシャワーシーンを見に来たほどでした。 ── そんな驚異的な回復の原動力は何だったのでしょうか。
あら馬さん:「12月には絶対高座に立つんだ」という目標があったからこそ頑張れたんです。ICUから一般病棟に移ったときも、12月の新しいネタを考えて練習していたら看護師さんに「うるさいです」と注意されちゃって(笑)。でも、それくらい落語が私にとっての支えでした。
■壮絶な闘病生活を経て高座に復帰。そして今 ── 2021年12月の高座復帰時、体調はいかがでしたか? あら馬さん:正直、見た目はかなり悪かったです(苦笑)。その時期はまだお腹から管を出して胆汁を外に排出しなきゃいけない状態でした。それでも高座への思いが強くて、その管をつけたまま鹿児島行きの飛行機に乗ったんです。周囲からは「こんな状態で飛行機に乗るなんて」と心配されましたよ。