「二つ目昇進の直前に2回目の余命宣告」三遊亭あら馬 人生を一度は諦めたものの肝臓移植を決意 提供した弟は「いいよ、娘の運動会があるけどね(笑)」
ただ、見た目の変化は激しくて、黄疸を通り超えて肌が茶色になっていました。そのせいか、お客さんが笑ってくれなくなってしまって。これでは落語が続けられないぞと。 ── そんななかで、生きる決意をされたそうですね。 あら馬さん:はい。二つ目に昇進した途端、思いもよらなかった隠れファンの存在に気がついたんです。「密かに応援してました」といった声を聞いて深く感激しました。それまでは、35歳のときに一度、胆管細胞がんの疑いで開腹手術を経験し、その痛みがトラウマとなって「二度と開腹手術はしたくない。それなら死んだほうがマシだ」と思っていたんです。
しかし、二つ目の昇進後は「自分の落語を楽しみにしてくれる人がいる。もっと高座に立ちたい」という思いが生きる気力となり、「肝臓移植に挑もう」という決意をすることができました。
■弟の肝臓の25%を移植したものの ── 10月に弟さんから肝臓を提供されたということですが、その経緯を教えていただけますか? あら馬さん:弟が以前から「俺の肝臓をあげるから手術しろ」と言ってくれていたんです。でも、私は「まだ大丈夫、手術は嫌だ」とずっと断っていました。しかし、前述のとおり、体調がどんどん悪化して8月にようやく「移植しようかな」と決心しました。弟に「お前、会社休める?」と聞いたら、「いいよ、娘の運動会があるけどね」って(笑)。
結局、病院側からも「あなたの肝臓移植の優先順位はすごく高い」と言われて。だけど、私はまだしゃべれていたし、死にかけてはいないので、亡くなった方からの肝臓提供を受けられませんでした。結局、弟の肝臓の25%を移植することになったんです。 ── 手術の流れはどのようなものだったのでしょうか。 あら馬さん:弟が先に入院して検査を受け、私がその1週間後に入院しました。手術当日は、弟が先に手術を受けて、その1時間後に私が隣の部屋で手術を受けました。