“オバマのファン”だったイーロン・マスクがトランプ派に転じて家族をぎょっとさせた一言とは「2024年のトランプ再選なんてまず無理だろ?」
それゆえ同年12月に友人でペイパル創業者のピーター・ティールに誘われると、トランプタワーを訪れることにした。 ふたりきりになったとき、トランプはマスクにこう語った。 「友だちにテスラを1台もらったんだけど運転したことないんだよね」 「NASAを復活させたい」 テスラとスペースXを率いるマスクはガッカリする。そののち大統領就任式でホワイトハウスを訪問した際にもトランプの言動を観察し、以下のような結論に達する。 「トランプは世界でもトップクラスの大ぼら吹きかもしれません」 「ペテン師なんだと考えれば、トランプの言動も、ある意味、納得することができます」 やがて気候変動と戦うパリ協定からアメリカが離脱したのをめどに、マスクは大統領諮問委員会を抜けた。脱CO2を掲げる電気自動車メーカーであるテスラとは、利益が相容れなかったのだ。
「もう4年、やる気はないか?」という質問にマスクの目の色が変わった
2020年5月、スペースXのファルコン9ロケットが、人を地球周回軌道に送り込むことに成功する。現地の発射台そばで見届けたトランプ大統領(当時)は、管制塔を訪れてお祝いを述べた。 「宇宙について大きなメッセージが世の中に示されたのは50年ぶりだ。すごいことだよ」 そしてマスクのところまで来て、こう尋ねた。 「もう4年、やる気はないか?」 このとき、マスクの目が遠くを見るものに変わったという。 そして、同じ年にコロナ禍が起きる。これをきっかけに、マスクの政治姿勢は変化してゆく。郡の当局から工場閉鎖が命じられると、自由を求めるマスクは規制に反発。かつてはオバマのファンで資金集めに協力したこともあったが、民主党進歩派を批判するようになる。
2022年の初頭、ツイッターの買収を密かに計画していたマスク。 ポリコレやウォークに席巻されたツイッターが、右派の不平や不満をおさえ過ぎている、言論の自由が多ければ多いほど民主主義にとっていい、と考えていた。 トランプのことはあい変わらず嫌いだったが、元大統領がツイッターから永久追放されるのは違うと考えた。ツイッターの検閲制度はおかしいと、テック系リバタリアンの友だちにも後押しされた。 ちなみに、マスクがアンチ・ポリコレ、アンチ・ウォーク、反民主党的な価値観を加速させた理由のひとつに、愛する息子(現・娘)が、性転換手術を受け、急進的な社会主義に傾倒。大金持ちである父親のマスクを拒絶したことへの悲しみもあった。