「中高年にありがちなのは…」還暦超えのノンフィクション作家・髙橋秀実が「ChatGPT」を使ってみた!
2024年11月に急逝した、ノンフィクション作家の髙橋秀実氏。その絶筆となった本稿では、「そもそもAIとは何か」というテーマに挑んだ。 【画像】ChatGPTを使うときの注意点 「デジタルに疎い」という髙橋氏が、手始めに「ChatGPT」を使ってみると――。 ◆◆◆
知ったかぶりするクセ
試みに私が「文章の校正はできますか?」と入力してみると、即座に「もちろんです! 何を校正してほしいですか? 文章をこちらにお送りください」と表示された。そこで校正能力をチェックすべく「僕の前に道はない。僕の後に未知はできる」という文章を送ってみる。「未知」は「道」の誤変換。それに気がつくか試したのである。するとAIはこう校正した。 「僕の前に道はない。僕の後に未知が広がる」 バカか? と私は思った。そこで「未知」を「満ち」と直して送ってみると、「僕の後には満ちることができる」。「満ち」を「充ち」にすると、どういうわけか「僕の後に光は差す」と校正してきたのである。おそらくAIは前段の文章との呼応が読み取れず、直前直後の単語しか予測できないのだろう。太田さん(編集部注:横須賀市経営企画部デジタル・ガバメント推進室室長の太田耕平さん)によると、 「AIは知ったかぶりをするんです。知らないのに知っているかのように言うクセがある」 鼻持ちならない秘書なのだ。確かに私が「AIについて取材したいのですが、どこに取材すればいいですか?」と質問すると、「AI研究機関や大学」「企業のAI部門」「技術系イベントやカンファレンス」「AIの影響を受ける業界」「コミュニティやフォーラム」などと満遍なく列挙し「多角的な視点を得ることができるでしょう」と図形をなぞるように回答した。そこで「AIに批判的な人を取材したい」と送ると、「倫理学者」「社会学者」「反AI団体や活動家」「労働組合の代表者」「ジャーナリストや作家」などを推薦してきた。そこで私は「髙橋秀実はどうですか?」と訊いてみたのである。すると問いかけからの推測だろう。こんな答えが返ってきた。 「高橋秀実(たかはしひでざね)さんは、AIやテクノロジーの社会的影響に関する批判的な見解を持つ著名なジャーナリストであり、作家としても活動しています。彼は特にAIの倫理、プライバシー、そして社会におけるテクノロジーの役割について鋭い視点を提供しており、その視点は多くの読者に影響を与えています」 ウソつけ、と私は画面に向かってつぶやいた。名前の読み方も違っているし、AIについての鋭い視点などまったくない。しかも髙橋秀実の代表作は『AIの衝撃』『未来のための新しい常識』『スマホがあなたをダメにする』『無知と悪』だというのだ。 ――そんな本は書いていない。 私は憤り、そう書いて送信すると、即座にこう謝罪してきた。 「正確な情報を提供できず、申し訳ありませんでした。彼の代表的な著作には『AIの逆襲』『自動運転は日本を救うのか』『仮想通貨とAIの未来』……」 ――そんな本は書いた覚えがない。 再び反論すると、即座に「ご指摘ありがとうございます。正確な情報を提供できなかったことをお詫び申し上げます」と謝罪し、「高橋秀実さんは主に以下の著作で知られています。『ペシミストのための恋愛論』『スマホ脳』『ゆるい人たち』『空気の読めない人のための哲学入門』」 知ったかぶりにもほどがある。私が否定を繰り返すから「ペシミスト」だと予測しているのだろうか。